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子どもの写真を飾りたい、というのが発端でした。うちは賃貸の2LDKで、退去時の原状回復が頭にある。壁に何かを掛けたいけれど、どこまでなら許されるのかが分からない。ネットで調べると「画鋲ならOK」「ピンは通常損耗」といった話がいくらでも出てくるものの、書いている人によって微妙に線が違う。それで一度、自分の契約書と公的な資料を照らして整理しました。以下は私が調べた範囲の話で、法律の専門家ではないので、最後は自分の契約書を読んでくださいという前提で書きます。
まず自分の契約書を開いた
結論から言うと、一般論より契約書の特約のほうが先でした。
うちの契約書には、原状回復に関する条項と、その下に特約が数行あります。読み直したところ、画鋲やピンの使用そのものを禁じる文言はありませんでしたが、「ネジ・釘等による壁面への穴あけは事前承諾を要する」という趣旨の記載がありました。つまり、うちの物件ではピンは触れられていないけれど、ネジは駄目、という線引きです。
これは物件ごとに違います。友人の物件では画鋲も禁止と書かれていたそうで、そうなると壁掛けは最初から選択肢に入らない。一般的な話を先に読むと、自分の物件で許されている範囲を見誤ります。入居時にもらった書類一式は、写真に撮ってスマホに入れておくと、こういうときに5分で確認が終わります。
公的な資料はどう書かれているか
次に調べたのが、国土交通省が公開している原状回復のガイドラインです。賃貸のトラブルを減らすための考え方をまとめた資料で、原状回復の解説記事でもよく引用されています。
そこで示されている考え方をざっくり言うと、通常の生活で生じる損耗や経年変化は借主の負担ではない、というのが基本線です。ポスターや絵を掛けるための画鋲・ピンの穴は、通常の生活の範囲として扱われる、という趣旨の説明がされていると紹介されていることが多い。一方で、下地のボードの張り替えが必要になるような釘やネジの穴は、借主の負担になり得るという整理です。
ただ、ガイドライン自体は法律ではなく、あくまで指針という位置づけだと説明されています。契約書に有効な特約があれば、そちらが優先される場面もある。だから、ガイドラインを根拠に「ピンなら絶対に大丈夫」とは言えません。私が読んだ限りでも、断定できる書き方はどこにもされていませんでした。
穴の大きさが判断の分かれ目らしい
いろいろな解説を読んでいて共通していたのは、穴の直径と、下地に達しているかどうかで扱いが変わるという点でした。
ピンや画鋲の穴は、直径にして1mm前後。壁紙に開くだけで、補修は壁紙の張り替え、あるいはほとんど目立たないまま済むことが多いとされています。対して、ネジやアンカーの穴は数ミリから10mm近くになり、石膏ボードそのものを傷める。ここが線引きの実態のようです。
石膏ボードの厚さは、住宅の内装だと9.5mmか12.5mmが一般的だと紹介されています。うちの壁を軽くノックしてみると、場所によって音が違う。ボードの裏に柱がある位置は詰まった音がして、それ以外は軽く響きます。柱の位置は下地センサーで探せるらしいのですが、うちは持っていないので、コンセントプレートの位置から推測する程度しかしていません。
ピンフックで実際に掛けているもの
調べたうえで、うちが今やっているのは、細いピンを使うタイプの壁掛けフックだけです。壁紙に刺さるピンが数本出ているもので、耐荷重は製品によりますが1個あたり2kg前後をうたうものが多い。
掛けているのは、A4サイズの写真フレームが2枚と、玄関の小さいカレンダー。フレームは1枚で500gほどなので余裕があります。刺すときはマスキングテープを貼ってから位置を決めて、テープごと剥がす。これで壁紙に付くのは針の跡だけです。
逆にやめたのが、粘着タイプのフックでした。以前、洗面所に貼った粘着フックを剥がしたとき、壁紙の表面が一緒に持っていかれて、5mm四方くらい白く欠けたことがあります。刺す穴より、剥がすときの被害のほうが大きい場合がある。これは実際にやらかして初めて分かりました。以来、壁紙の上に粘着系のものは貼らないようにしています。
ワイヤーで吊るという選択肢を調べた
もう少しちゃんと飾りたくなって、次に調べたのがワイヤーで吊る方式です。上部に取り付けたレールや金具からステンレスのワイヤーを垂らして、そこに自在フックを付けて額縁を掛ける。美術館の展示でよく見るあの方式の、家庭用のものですね。
見つけたのが、長さ1000mmのステンレスワイヤーに自在フックが付いた、直付けタイプの吊り金具でした。約1,322円。
私が惹かれたのは、壁に開ける穴の数が減ることでした。額縁を3枚縦に並べたい場合、フックを直接刺すなら穴は3箇所以上。ワイヤーなら、上部の固定が1箇所で、そこから垂らしたワイヤー上でフックの高さを自由に動かせます。しかも、飾る物を替えるたびに新しい穴を開けなくていい。賃貸で気にすべきは、穴の大きさと同じくらい、穴の数だと気づきました。
ただ、これはまだ導入していません。理由は、上部をどこに固定するかが解決していないからです。専用のピクチャーレールが最初から付いている物件ならワイヤーを掛けるだけですが、うちには付いていない。直付けタイプは壁面や枠に金具を留めることになるので、その固定方法が契約書の「ネジによる穴あけ」に触れないか、まだ判断がついていません。カーテンレールの上部から吊れるかどうかも含めて、確認中です。分からないまま先に穴を開けるのが一番まずいので、ここは止まっています。
壁を使わずに済ませる方法も一通り見た
ワイヤーの件が止まっているあいだに、壁に触らない手段も調べました。
よく紹介されているのが、突っ張り式の柱を床と天井のあいだに立てて、その柱に棚やフックを付ける方式です。壁には一切穴が開かない。ただ、うちの場合は天井が石膏ボードなので、強い突っ張りをかけ続けたときに天井側が凹むリスクがあると書かれている記事をいくつか見ました。専用の当て板を使う前提の製品が多いようです。それと、乳児がいる家で床から天井まで届く柱を立てるのは、地震のときのことを考えると判断が要ります。うちは見送りました。
もうひとつが、石膏ボード用の細いピンを複数本使う専用の止め具です。ボードに斜めに数本のピンを打ち込んで支える構造で、穴は細いのに数キロを支えられるとされているもの。ピンフックの上位互換に近い位置づけですね。うちで使っているフックもこの系統ですが、より耐荷重の大きい製品もあるようで、有孔ボードを壁に立てかけて固定するような用途で紹介されているのを見ました。
結局どれも、選ぶ前に確認すべきなのは「その穴が退去時にどう見なされるか」で、そこは製品の説明ではなく契約書側の話です。製品ページに「賃貸でも安心」と書かれていても、それは製品を作っている側の一般論でしかない。ここを混同しないようにしています。
結局、うちの現在地
今の運用は、ピンフックで軽いものを数点、それ以外は壁を使わない、です。子どもの写真は結局、テレビ台の上と本棚の棚板に立てて置く形に落ち着きました。壁に飾るより地味ですが、位置を毎月変えられるので、これはこれで悪くない。
調べていて一番よかったのは、「賃貸だから何もできない」という思い込みが、実際にはもう少し幅があると分かったことでした。同時に、ネットの一般論をそのまま自分の物件に当てはめるのは危ない、というのも分かった。ガイドラインの考え方を頭に入れたうえで、自分の契約書の特約を読む。この順番でしか判断できません。
退去のときにいくら請求されるかは、正直やってみないと分からない部分が残ります。だから私は、迷ったら穴を開けないほうを選んでいます。数千円の飾りのために、退去時に数万円を賭ける気にはならないので。
この記事は家の修理の個別記事です。賃貸でどこまで自分でやるかは家の小さな不具合を自分で直す|賃貸でどこまでやるかで整理しています。

