裁断と自炊|やるとしたら何が要るか

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押し入れの箱を数えたら、本の入った衣装ケースが4つありました。1つ15kgくらい。この物理量をどうにかできないかと考えて、自炊、つまり本を裁断してスキャンしてデータにする方法を調べました。

先に書いておくと、私はまだやっていません。調べた結果、今の自分には合わないと判断して見送りました。ただ調べる過程で分かったことは多かったので、何が必要で、いくらかかって、どこに注意するのかを整理しておきます。やる前に知っておきたかった話ばかりです。

まず著作権の線をはっきりさせておく

ここを曖昧にしたまま道具の話をしても意味がないので、最初に書きます。私は法律の専門家ではないので、以下は文化庁の解説や公開されている判例の説明を読んだうえでの理解です。判断に迷う場面では、必ず一次情報を確認してください。

著作権法には私的使用のための複製という規定があります。個人的に使う、あるいは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使うことを目的とする場合に、その使用する人自身が複製できる、というものです。自分で買った本を、自分でスキャンして、自分や同居の家族が読む。これは基本的にこの範囲に収まると理解されています。

問題は、この範囲から外れる行為です。調べたかぎり、少なくとも次のものは私的複製として扱えません。

  • スキャンを業者に代行してもらうこと。複製する主体が自分ではなく業者になるため私的複製に当たらない、という判断が裁判例で示されています
  • できたデータをネット上にアップロードする、不特定多数に配る、売る
  • 友人や職場の人にデータを渡す。「限られた範囲」は家庭内やそれに準ずる程度とされていて、友人知人まで広げられるものではありません
  • 電子書籍のコピー防止のしくみを回避して複製すること

それから、当たり前ですが図書館で借りた本や人から借りた本を裁断するのは論外です。自分の所有物であることが大前提。「自分が買った本を、自分で、自分のために」という3つが揃っているかどうか。ここだけは、道具を買う前に確認しておく話だと思いました。

もうひとつ気になったのが、裁断済みの本を古書店に売っていいのかという点です。紙の本を売ること自体は所有物の譲渡なので問題ないはずですが、データを手元に残したまま原本を手放すのは、私的複製の考え方からすると筋が悪い。実務的には「売る、あるいは処分するならデータも消す」を守るのが無難だ、という説明をよく見かけました。

必要な道具は2つ、そして両方それなりに高い

調べてみると、自炊に要る道具は結局2つに絞られます。本の背を落とす断裁機と、紙を連続で吸い込むドキュメントスキャナです。

断裁機は、事務用のペーパーカッターとは別物でした。定番として名前が挙がるのは、一度に数百枚を切れる据え置き型で、価格は3万円台から4万円台。重量が30kgを超えるものもあって、2LDKの賃貸に常設できるサイズではありません。刃の交換も必要になります。

スキャナのほうは、原稿を自動で送り込むADF付きのモデルが前提です。有名どころは4万円台から5万円台。1分間に何十枚という速度が出ますが、これも机の上を占領します。合わせて8万円前後。100冊やって1冊あたり800円、300冊やって266円という計算になります。

この数字を出した時点で、私の中ではだいぶ現実味が薄れました。うちの押し入れの本は、ざっと数えて180冊ほど。全部やるとして、機材代を割ると1冊440円です。悪くない気もしますが、そのために30kgの機械を置く場所がない。

安い裁断機で代用できるのか

それで、もっと安い選択肢を見ていました。3,990円ほどで、ラミネーターに裁断機と角取り器が付いた3点セットというものがあります。A4とB5に対応した、事務用の小さなカッターが付いてくるタイプです。

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結論から書くと、これで本を裁断するのは無理があります。この手のカッターは一度に切れるのが数枚から10枚程度で、300ページの本を一気に切るための道具ではありません。背を落とすには何十回も切り分けることになり、そのたびに切断面がずれます。私が使っていないので断言は避けますが、仕様上そういう用途を想定していないのは明らかです。

ではまったく無関係かというと、そうでもなくて。自炊とセットで語られる作業の中には、紙で残したいものをラミネートするというものがあります。うちの場合、子どもの検診の記録や保育園の書類のような、濡らしたくない紙が少しずつ増えています。角取り器も、手作りのカードの角を丸めるのに使える。本を減らす道具ではなく、紙を守る道具として見るなら、この価格は納得できます。買うなら、そちらの目的で買うものだと思いました。

手順そのものは単純らしい

紹介されている手順を並べると、だいたいこうなります。カバーと帯を外す。背表紙側を5mmから7mmほど断裁機で落とす。糊が残っていないか、ページが2枚くっついていないか確認する。50枚くらいずつスキャナに入れる。設定はカラー、300dpiか400dpi。読み取ったあとに文字認識をかけてPDFにする。

難所として挙げられているのは2つでした。ひとつは重送。紙が2枚重なって吸い込まれ、ページが抜けます。あとで気づいても、本はもう裁断済みなのでやり直せません。もうひとつは糊の残り。落とす幅が足りないと紙が繋がったままで、そこで詰まります。かといって切りすぎると本文の端が欠けます。

1冊にかかる時間は15分から20分程度と紹介されていることが多いです。仮に180冊やるとして、45時間から60時間。休日を丸ごと10日分ぐらい使う計算になります。この時間の話が、機材代よりも決め手になりました。乳児がいる今の生活で、そこに10日は出せません。

本の種類によって向き不向きがある

調べていて納得したのが、全部を同じようには扱えないということです。

技術書のような判型が大きくて図表が多いものは、データ化するとタブレットで読みづらくなる、という指摘をよく見ました。A5やB5の紙面を10インチの画面に収めると、コードの部分が小さくなる。かといって拡大すると、行き来が面倒になります。この点は、電子版が最初から出ているならそちらを買ったほうが確実です。

逆に向いているとされているのは、文庫や新書のように文字が中心で判型が小さいもの。それと、もう電子版が出ていない古い本です。私が仮にやるとしたら、この最後のカテゴリだけになると思います。20年前に買って、今はどこにも電子版がないもの。数えたら、うちには12冊ほどありました。12冊のために8万円は出せません。

絵本は対象外です。子どもが実際に手で開くものなので、裁断する意味がない。むしろ紙のまま何冊あるかを把握しておくほうが大事でした。

私が代わりに選んだこと

自炊を見送って、結局どうしたか。単純で、持っている本の総量を減らすほうに寄せました。データ化して残すのではなく、残さないものを決める。

具体的には、押し入れの4ケースを1つずつ開けて、もう一度買えるものと買えないものに分けました。買い直せるものは手放す。売るにしても譲るにしても箱が要るので、宅配用の段ボールをまとめて用意してあります。

ダンボール 段ボール 宅配 100サイズ (38×27×28cm) 10枚 20枚 30枚 100枚セット 二つ折り配送 引越し 引っ越し

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この作業に使った時間は、休日の午前を3回分。自炊の45時間と比べると桁が違います。減った量は4ケースが2ケースになった程度なので、劇的ではありません。ただ、機械を置く場所も、刃の交換も、重送の確認も要らない。

最後に

自炊は、道具さえ揃えばできる作業です。ただ、揃えるのに8万円前後、全部やり切るのに数十時間。この2つを払える人にとっては合理的な選択で、払えない人にとっては、たぶんずっと途中で止まります。私は後者だと判断しました。

もし始めるなら、法律の線を先に引いておくこと。自分で買った本を、自分でスキャンして、自分と家族の範囲で読む。代行に出さない、配らない、売らない。この4つを外さなければ、私的複製の範囲から出ることはないはずです。道具の値段よりも、ここを先に確認するほうが順番として正しいと思います。

この記事は本の置き場所と道具の個別記事です。置き場所を決めるまでの全体は本が増えた家で置き場所を決めた|読む前に置き場所にまとめています。

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