印鑑と朱肉|まだ手放せない場面

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仕事の書類はほぼ電子署名で済むようになりました。それでも、印鑑を捨てられていません。銀行の窓口、行政の一部の手続き、そして子どもが生まれてから増えた紙の書類。押す回数は減っているのに、ゼロにはならない。

この中途半端な状態が続くなら、道具として最低限のものは揃えておきたい。そう思って調べたことを整理します。私自身が実印を作り直したわけではないので、ここに書くのは調べたうえでの判断と、選ぶならこうする、という話です。

押印が残っている場面を調べてみると

まず前提として、契約書に押印がなければ無効、という決まりが一般にあるわけではありません。法務省などが公開している資料でも、押印は文書が本人の意思で作られたことを示す手段のひとつとして説明されています。それでも慣習として残っている、というのが実態に近いようです。

調べると、押印が必要とされる場面は大きく3つに分かれていました。ひとつが金融機関の届出印。口座を作るとき、あるいは窓口で手続きをするときに使うもので、多くの銀行では印鑑を登録する運用が残っています。ネット銀行では不要なところも増えています。

ふたつめが、市区町村に登録する実印を使う場面。不動産の売買、自動車の登録、相続の手続きなどが該当します。ここは印鑑登録証明書とセットで求められるので、代わりが利きません。

みっつめが、日常の認印です。宅配便の受け取りは今はサインで済むことがほとんどですが、うちでも保育園や自治体に出す紙にはまだ押す欄がありました。こちらは重要度が低い代わりに、使う頻度が一番高い。

種類とサイズの目安

印鑑は用途で3種類に分かれ、それぞれサイズの目安が違う、と紹介されていることが多いです。

実印は一番大きく、直径15mmから18mm程度。銀行印はそれより一回り小さく12mmから15mm程度。認印は10.5mmから12mm程度が定番、という説明をよく見かけました。ただ、これは慣習的な目安で、法律で決まっているのは登録できる印影の大きさの範囲くらいです。多くの自治体では、印影が一辺8mmの正方形に収まらず、一辺25mmの正方形に収まること、といった条件が示されています。細かい規定は自治体ごとに違うので、実印を作るなら住んでいる市区町村の案内を先に見るのが確実です。

もうひとつ、よく書かれているのが「3本を別々にする」という考え方。実印と銀行印と認印を1本で兼ねると、なくしたときや、印影が流出したときの影響範囲が広がるからです。私も、認印を銀行印と兼ねるのはやめておこうと思っています。

それと、ゴム印は実印にも銀行印にも登録できないのが一般的です。押すたびに印影が変わる可能性があるため、というのが理由として挙げられていました。インク浸透印を認印として使うのは日常的ですが、大事な書類では別に用意する必要があります。

素材で何が変わるのか

素材の選択肢は、調べた限り大きく4系統ありました。

柘などの木材系は安く、5,000円前後から見つかります。ただ、乾燥や湿気の影響を受けやすいと説明されることが多い。黒水牛や牛角といった角系は木材より硬く、朱肉のなじみがよいとされています。チタンは硬度が高く、欠けにくく、朱肉の付きも安定するという評価が目立ちました。そのぶん値段は上がって、1万円台後半から。

4つめが、アクリルや貝を使った樹脂系です。ここは価格が低く、色や柄のバリエーションが多い。今回の記事の商品もこの系統で、蝶貝の模様を樹脂に閉じ込めたタイプでした。

私が見た範囲では、認印や銀行印のように使用頻度が高くて代替が利くものは、樹脂系でも困らないという意見が多かったです。一方で実印は数十年使う前提になるので、耐久性のある素材にしておいたほうがいい、という書き方をされているところが多い。この分け方は納得できます。

調べたうえで、選ぶならこれかなと思ったもの

今回見ていたのが、ケース付きで12mmの印鑑セットです。蝶貝パールの柄で、上下の向きが分かるアタリが付いていて、1,780円ほど。

印鑑 はんこ 銀行印 認印 印鑑セット ケース付き 12mm かわいい カラフル 蝶貝パール アタリ付き きららケース 印鑑ケース 朱肉付き

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気になったのはアタリが付いている点でした。丸い印鑑は、持ったときに上下が分かりません。私は書類の欄に対して斜めに押してしまったことが何度もあります。アタリは側面に付いた小さな窪みや飾りで、そこを上に向ければ印影が正立する、という目印です。これがあるだけで、押し直しが減るはず。

一方で、気になる点も書いておきます。まず、この価格帯は樹脂系なので、実印として20年30年使う想定なら選ばないと思います。それと、柄がはっきりしているタイプは、仕事の書類に押す道具としては人によって好みが分かれます。写真で見た限りは落ち着いた色味でしたが、これは実物を見ないと分からない部分です。

あともうひとつ、価格が安いセットは既製品と受注彫刻が混在しています。名字が既製品にある字なら安く手に入りますが、銀行印として使うなら、他人と同じ印影にならないほうがいい。この点は注文前に確認する必要があります。

朱肉の種類と、押し方

朱肉は大きく2種類ある、と説明されていました。スポンジに顔料を含ませたスポンジ朱肉と、練り込まれた油性の練朱肉です。

スポンジ朱肉は安く、乾きが速く、日常の書類向き。100円台から売っています。練朱肉は発色が濃く、時間が経っても色が残りやすいとされていて、契約書や登記に使う書類向き。値段は1,000円台から数千円まで幅があります。

押し方についても、調べると共通して書かれていることがありました。朱肉には押し付けず、軽く数回叩くように付ける。紙の下には少し弾力のあるもの、いわゆる捺印マットを敷く。押すときは真上から体重をかけて、日の字を書くようにわずかに前後左右へ力を移す。この3つです。硬い机の上で直接押すと、印影の中心が薄くなるという説明にはなるほどと思いました。

朱肉を使わずに済ませたい場面向けに、印鑑ホルダーという道具もあります。印鑑を差し込んでおくと、キャップ側に朱肉が仕込まれていて、押すだけで済む。認印を頻繁に使う人には評判がよさそうでした。私は押す頻度がそこまで高くないので、今のところ普通の朱肉で足りています。

保管でよく言われていること

印鑑の寿命を縮める要因として挙げられていたのは、乾燥、直射日光、そして朱肉の付着でした。

押したあとに印面を拭かずにしまうと、朱肉が印面の溝に固まって、次に押したとき印影が潰れる。柔らかい布やティッシュで軽く拭く、というのが基本のようです。強くこすると印面が傷むので、あくまで軽く。

置き場所については、直射日光の当たる窓際や、暖房の風が直接当たる場所は避ける。木材系の素材は乾燥でひび割れることがあると書かれていました。ケースに入れておくのは、傷対策と同時に乾燥対策でもあるわけです。

それと、防犯の観点でよく指摘されていたのが、通帳と銀行印を同じ引き出しに入れないこと。実印と印鑑登録証も同様です。うちも、書類をまとめてひとつの引き出しに突っ込んでいたので、これは分けようと思いました。

もうひとつ、朱肉が内蔵されたケースの扱いにも注意が要るようです。蓋側に朱肉が付いているタイプは押すときに便利な反面、入れっぱなしにすると印面が朱肉に触れ続けることがある。使わない期間が長いなら、朱肉なしのケースに入れておくほうが印面には優しい、という説明を見ました。

家族で何本持っているかを把握しておくのも、地味に大事だと思っています。うちは私と妻でそれぞれ認印があり、子どもの口座を作るときにもう1本増えました。どれがどの用途かを紙に控えて、印鑑とは別の場所に置いておく。本数が増えてから整理するのは面倒なので、少ないうちにやるほうが楽です。

押印の場面が減っているのは間違いないと思います。ただ、減るのと消えるのは別で、必要になったときに慌てて作るとろくなことにならない。1,780円くらいの認印を1本、朱肉を1つ、ちゃんとケースに入れて場所を決めておく。それだけの準備の話でした。

この記事は文房具の個別レビューです。紙に戻ってきた理由と道具の全体は画面ばかりの毎日で紙に戻った|使っている道具で振り返っています。

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