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在宅勤務を始めて4年目になりますが、音まわりの機材を本気で見直したのは今年の春です。子どもが生まれて、家の中で鳴っている音の種類が一気に増えた。それまでノートPCの内蔵マイクとスピーカーだけで平然と会議に出ていたのが、通用しなくなりました。
結論から書くと、私が手を入れたのは「出す音」「入る音」「聞く音」の3つで、金額でいえば合計2万円ちょっと。部屋の防音工事のような大きい話は一切していません。賃貸の2LDKでできる範囲、というのが前提条件です。この記事はその全体像で、個別の機材の話はそれぞれ別に書いています。
内蔵マイクで足りていたのは、家が静かだったから
以前の環境は本当に何もしていませんでした。MacBookを開いて、内蔵マイクと内蔵スピーカーでZoomに入る。それで4年間、誰にも何も言われなかったんですよね。夫婦二人のときは日中の家が完全に無音だったので、内蔵マイクの性能でもなんとかなっていたということだと思います。
それが崩れたのは、子どもが生後2ヶ月くらいのときでした。設計レビューの最中に泣き声が入って、相手側の音声が一瞬途切れた。内蔵マイクは指向性が緩いので、ディスプレイの向こう側で鳴っている音も同じくらいの大きさで拾います。しかも自分のPCのスピーカーから出ている相手の声まで一緒に拾って返してしまう。この2つが同時に起きると、会議としてかなり厳しい。
そのとき初めて、自分の音声環境が「家が静かである」という前提の上に乗っかっていたことに気づきました。前提が変わったのに機材だけ据え置きだった、というだけの話です。
もうひとつ、在宅勤務そのものの性質も関係しています。私はモバイルアプリの開発をしていて、コードを書いている時間が長い代わりに、仕様のすり合わせや不具合の再現確認で画面共有しながら話す会議が週に10本前後あります。1本30分として週5時間。この5時間のあいだ、家のリビングと私の口が音でつながってしまう。回数が多いぶん、1回あたりの品質より「毎回安定しているか」のほうが問題になりました。
音の問題を3つに分けて考えた
まとめて「音の対策」と考えると手が止まるので、私は3つに分けました。自分の声を相手に届ける経路、家の音が会議に混ざる経路、相手の声を自分が聞く経路。この3つは対策の中身がまったく違います。
たとえばノイズキャンセリングイヤホンを買っても、解決するのは3番目だけです。自分の側から出ていく生活音には何の効果もない。逆に高性能なマイクを買っても、自分が集中できないという問題は1ミリも解決しない。この切り分けをしないまま「在宅 音 対策」で検索すると、いろんなレイヤーの記事が混ざって出てくるので混乱します。
優先順位は、迷惑をかける順にしました。相手の時間を奪うものが一番上。つまり2番目の「家の音が会議に混ざる」から手をつけて、次に1番目の声の品質、最後に自分の快適さ、という順番です。
この順番にしたのには理由があって、自分の快適さは我慢が効くけれど、相手に聞き返させるコストは我慢では消えないからです。「今なんて言いました?」が1回の会議で3回発生すると、実質的に会議時間が数分伸びる。10人が参加している会議なら、その数分は10倍になります。ここは機材で削れるところなので、削っておくのが早い。
最初に替えたのは、やっぱりマイクだった
2番目と1番目はマイクを1本足すだけで同時にかなり改善します。ここが一番費用対効果が高かった。私が買ったのは4千円弱のUSBコンデンサーマイクで、USBケーブル1本でPCにつながるタイプです。オーディオインターフェースもファンタム電源もいりません。
効いたのは音質より指向性のほうでした。単一指向性なので、マイクの正面30cmにいる自分の声は拾って、背後1.5m先のリビングで鳴っている音は相対的に小さくなる。距離が近いぶん入力レベルを下げられるので、部屋の反響も減ります。導入した週の会議で「音が変わりましたね」と言われたので、体感だけの話ではなさそうです。
不満もあります。まず机の上の占有面積が増えること。台座つきで直径10cm弱あるので、狭いデスクだと邪魔です。それから、机を叩く振動をそのまま拾います。私はタイピングが強いほうなので、キーを打つたびに「ゴッ」という低い音が乗るのが最初かなり気になりました。これは後からマイクアームを買って解決しています。
あと、音質については主観だと断っておきます。私はオーディオの専門家ではないし、測定機器も持っていません。内蔵マイクと比べて明らかに良くなったと感じた、という以上のことは言えないです。
聞く側は、ひとつに決められなかった
相手の声を聞く側は、結局1台に決まりませんでした。用途が違うからです。1時間を超える会議は軽いヘッドセット、家族が同じ部屋にいるときはノイズキャンセリング付きのワイヤレスイヤホン、と使い分けています。
ヘッドセットは長時間つけていられるかどうかがすべてで、音質は正直どうでもいい。逆にイヤホンのほうは、掃除機や食洗機が回っている時間帯に集中するための道具なので、遮音のほうが優先です。同じ「音を聞く機材」でも評価軸が別物なんですよね。
機材を買う前に、設定でできることもあった
順番が前後しますが、実はマイクを買う前にソフト側の設定を一通り触っています。お金がかからないので先に試すべきでした。
効果が分かりやすかったのは、会議アプリ側のノイズ抑制の強度設定です。Zoomにも Google Meet にも、背景ノイズを抑える設定が用意されていて、既定値より強い設定を選べる。うちの場合、洗濯機の運転音のような定常的な音はこれでかなり消えました。逆に、子どもの泣き声のように突発的で音程が動く音はほとんど残ります。定常音には強く、非定常音には弱い、という傾向は覚えておくと期待値がずれません。
それから、マイクの入力レベルを自動調整に任せず手動で下げること。自動だと、こちらが黙っている時間に感度が上がって、部屋の生活音を拾いにいってしまいます。私は入力レベルを7割くらいに固定して、そのぶん口とマイクの距離を近づけました。これも0円です。
ただ、こうしたソフト側の処理を強くかけると、自分の声のほうも削れます。子音が潰れて、こもった感じになる。設定を最強にして「ノイズは消えたけど何を言っているか分からない」状態になったことがあって、そこで機材に投資する判断をしました。
買ったけど使わなくなったもの
失敗もあります。最初に買ったのが3千円くらいの片耳Bluetoothヘッドセットで、これは1ヶ月で使わなくなりました。理由は充電です。会議が続く日に途中でバッテリーが切れて、そこから有線に戻すという事故を2回やって、信用できなくなった。会議用の機材は、切れないことのほうが性能より上位にあると学びました。
もうひとつは、リビングの壁に吸音材を貼ろうとして妻に止められた件です。私の作業スペースは寝室兼書斎の一角なので、そもそもリビングに貼っても意味がなかった。音の発生源と自分の位置関係を図にしてから買え、という当たり前のことをやっていませんでした。結局そのあと、机の正面の壁に30cm角のパネルを6枚だけ貼る形に落ち着いています。金額にして2千円弱。効果は「自分の声の反響が減った」という程度で、家族の音が消えるわけではありません。
3つめの失敗は、有線から無線に一度全部寄せようとしたことです。ケーブルが減るのは気持ちいいんですが、無線が増えるほど「今どのデバイスにつながっているか」を確認する手間が増える。会議の開始10秒前にイヤホンがスマホにつながっていることに気づいて焦る、というのを繰り返して、結局PCにつなぐものは有線に戻しました。
今の構成と、これから直したいところ
いま落ち着いているのは、USBマイク1本、マイクアーム1本、ヘッドセット、ワイヤレスイヤホン、それとデスク周りの吸音パネルが数枚という構成です。全部足しても2万円台。工事は何もしていないので、引っ越すときはそのまま持っていけます。
残っている課題は、寝室のドアです。作業しているのが寝室なので、子どもが寝ているときは会議に出られない時間帯が発生する。これは機材で解決する話ではなくて、間取りとスケジュールの問題だと思っています。次に引っ越すときは、扉が2枚挟まる部屋を作業場所にしたい。
音の対策は、一気に全部やろうとすると金額が跳ね上がります。私の場合はマイク1本で体感の8割が解決したので、まずそこからでよかったです。
機材ごとの詳しい記事
この記事で触れたものは、それぞれ単体でも詳しく書いています。気になったものがあれば個別記事も読んでみてください。

