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会議中の自分の打鍵音が相手に届いていると気づいたのは、録音を聞き返したときでした。メモを取っているつもりの「カタカタ」が、思っていたよりずっと大きく入っている。そこからキーボードを見直して、いまは静音軸に載せ替えたメカニカルを使っています。
先に断っておくと、メカニカルキーボードは基本的にうるさい部類です。静かにしたいなら本来は薄型のパンタグラフを選ぶほうが素直。それでもメカニカルを選んだ理由と、実際どこまで静かになったのかを書きます。打鍵音の評価は主観で、騒音計は使っていません。
そもそも何の音が問題だったのか
打鍵音といっても、鳴っている音は1種類ではありません。私の環境では3つに分かれていました。
ひとつめが、キーが底まで落ちきったときの「コッ」という音。打ち方が強い人ほど大きくなります。ふたつめが、指を離してキーが戻るときの音。これは軸の構造で決まります。みっつめが、机の天板を通じて伝わる振動。これは空気を伝わる音ではないので、マイクの位置を変えても消えません。
録音で一番目立っていたのは、意外にも3つめでした。マイクを机に直置きしていたので、打鍵のたびに低い「ゴッ」という音が乗る。これはキーボードを替えても解決しないやつです。私はまずマイクアームを買って、マイクを机から浮かせました。
この時点で、相手に届く打鍵音のかなりの部分が消えました。キーボードの話をする前に、まず振動の経路を切るほうが先です。私は順番を間違えて、先にキーボードを見に行きかけました。
ついでに、キーボードの下に敷くマットも試しました。3mm厚のデスクマットを敷くだけで、天板に伝わる振動が減ります。数百円で試せるので、これは先にやる価値がありました。うちは既にマウスパッド兼用の大きいマットを敷いていたので、たまたま効いていた部分もあったようです。
それでも残った音と、買い替えの判断
残ったのが空気を伝わる音です。当時使っていたのは会社支給の安いメンブレンキーボードで、押した瞬間に「パチッ」という高い音が出るタイプ。高い音はマイクにもよく入るし、ノイズ抑制でも消えにくい。
買い替えを決めたのは、それとは別の理由もあります。私はモバイルアプリの開発をしていて、1日の大半をコードを書いて過ごします。手が疲れにくいかどうかは生産性に直結する。せっかく替えるなら、静かさと打ち心地の両方を見たいと思いました。
選んだのは、5千円台の81キーのメカニカルキーボードです。テンキーがないコンパクトなサイズで、ホットスワップ対応。つまり、はんだ付けなしでスイッチを引き抜いて別のものに差し替えられます。これが決め手でした。
買った状態の軸は、押し込む途中で「カチッ」と手応えがあるタイプでした。打っていて楽しいんですが、明らかにうるさい。会議中に使える音ではありません。ここで、ホットスワップの意味が出てきます。
静音軸に載せ替えた
別売りの静音タイプの軸を買って、全部入れ替えました。81キーぶんで、軸だけの費用が3千円ほど。付属の引き抜き工具でキーキャップと軸を外して、新しい軸を差し込むだけです。作業時間は40分くらいでした。
静音軸というのは、軸の内部にゴム状の緩衝材が入っていて、底打ちと戻りの音を小さくしたものです。押し始めから押し切りまで手応えの段差がない、いわゆるリニアの構造と組み合わせるのが一般的だと理解しています。
結果として、音はかなり減りました。元の「カチッ」が消えて、「トスッ」という感じになる。録音して比べると、打鍵のピークがはっきり下がっているのが分かります。会議中にメモを取っても、相手から指摘されることはなくなりました。
ただし、無音にはなりません。指がキーキャップに当たる音と、キーが底に着く音は残ります。深夜に隣で人が寝ている状況で気兼ねなく打てるかというと、そこまでではない。私は夜の作業時間は、静かさ優先でノートPCの内蔵キーボードに切り替えることがあります。
それと、静音軸に替えてもスペースキーだけは音が残ります。長いキーには安定させるための金具が入っていて、そこが鳴るからです。私は一番よく叩くキーがこれなので、実質的に一番うるさいのがスペースになりました。金具に潤滑剤を塗ると改善するらしいんですが、まだ試していません。
作業時間で言うと、軸の交換は思ったより単純でした。ただ、差し込むときにピンが曲がりやすいので、まっすぐ入れる必要があります。私は2個曲げて、ピンセットで戻しました。一度に全部やらず、5個ずつ確認しながら進めるほうが安全です。
不満だったところ
不満は3つあります。ひとつめは、静音軸にすると打鍵感が曖昧になること。緩衝材が入るぶん、底に着いた感触がぼやけます。私は最初の1週間、押し切ったかどうかが分からなくて打ち間違いが増えました。慣れましたが、カチッとした手応えが好きな人には物足りないはずです。
ふたつめは、キーボード本体の共振です。安価な筐体はケースの中が空洞なので、打つと箱そのものが鳴ります。軸を替えてもこの成分は残る。私は本体の底面に薄いフェルトを敷いて、机との接地面での振動を減らしました。それでも高級な製品のような詰まった打鍵音にはなりません。
みっつめは、光ることです。RGBバックライトが付いていて、初期状態では色が流れるように動きます。仕事中に視界の端でこれが動くのは集中の邪魔でした。設定で単色の常時点灯にして落ち着かせています。消すこともできますが、暗い部屋では光っていたほうが打ちやすい。
あと細かいところで、81キーだと矢印キーの右上あたりが詰まっていて、Deleteの位置が普段と違いました。1週間くらい押し間違えます。コンパクトなキーボードは、キー数が減るぶんどこかにしわ寄せが来るので、配列の写真は買う前によく見たほうがいいです。
失敗もひとつ。最初に静音軸を買うとき、値段だけ見て安いものを選んだら、押すのに必要な力が重いタイプでした。50g近くあって、1日打っていると指が疲れる。結局もう一度買い直して、45g程度の軽いものに替えています。無駄になった3千円は授業料でした。軸を選ぶときは、静音かどうかだけでなく押下圧の数字も見ること。
静かにしたいだけなら、たぶん別の選択肢
正直に書くと、静かさだけが目的なら、私の選択は遠回りです。本体5千円台に軸3千円で、合計8千円ちょっと。同じ予算でパンタグラフの静音キーボードを買えば、最初から静かなものが手に入ります。
私がこの構成にしたのは、打ち心地も同時に上げたかったのと、あとから軸を替えられる余地を残したかったからです。使ってみて合わなければ、はんだ付けなしで別の軸を試せる。この「やり直せる」という性質に3千円払った、という感覚です。
逆に、キーボードにこだわりがなくて会議中の音だけ何とかしたい人には、そこまでの投資は要らないと思います。まずマイクを机から浮かせて、それでも打鍵音が入るなら薄型の静音キーボードを4千円くらいで買う。そのほうが早いし安い。
ノートPCの内蔵キーボードも、静かさという一点では優秀です。ストロークが浅いので底打ちの音が小さい。会議中だけ内蔵に切り替える、というのは0円でできる対策として実際に有効でした。私も外部ディスプレイに映しながら、会議のあいだだけノート本体で打つことがあります。
私は自分の打鍵が強いほうだと自覚していて、そこは機材で完全には解決していません。軽く打つ練習をしたほうがいい、というのは分かっているんですが、これは半年経ってもあまり直っていないです。
この記事は音まわりの個別レビューです。在宅勤務の音を何から変えたかは在宅勤務の音問題|子どもが生まれてから全部変えたで振り返っています。

