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防災リュックの中身を点検していたとき、ふと財布を開いてみました。現金が812円。千円札はなく、あるのは小銭だけ。カード類とスマホ決済で生活しているので、そういえば最後にATMで下ろしたのがいつだったか思い出せませんでした。
停電したらこの812円で何日か過ごすことになる。そう考えて、その週末に現金の備えを見直しました。金額の正解は家庭ごとに違うので断定しませんが、考え方と保管方法については書けることがあります。
停電すると、レジもATMも止まる
キャッシュレス決済は、想像以上に多くのものに依存しています。まず店舗の決済端末に電気が要る。次に通信が要る。カード会社や決済事業者のサーバーとやり取りしないと承認が下りないので、店に電気があっても回線が切れていれば使えません。
ATMも同じです。電気と通信の両方が必要で、どちらかが欠ければ動かない。銀行の窓口も、システムが止まれば通常業務はできません。過去の大規模停電では、コンビニやスーパーが現金のみの手売りに切り替えた例が報じられています。電卓とレジ袋で会計をしていた、というやつです。
非常用電源を持っている大型店なら決済が生きている可能性もありますが、それは運です。電気と通信が止まった瞬間、支払い手段は現金だけになるという前提で備えておくのが安全だと思っています。
もうひとつ見落としていたのが、スマホのバッテリーです。仮に決済網が生きていても、自分のスマホが切れていれば同じことです。モバイルバッテリーを持っていても、充電が回らない状況が数日続けば、いずれ現金しか使えなくなります。
千円札と小銭が要る、これは本当に効く
金額よりも先に、私が驚いたのが券種の話でした。停電中の店はレジが使えないので、釣り銭の計算を手作業でやることになります。そして、そもそも釣り銭の在庫が限られている。
1万円札で500円の水を買おうとしても、店に9,500円の釣り銭がない。実際、災害時に「お釣りが出せないので、ちょうどの金額でお願いします」という運用になった話はよく聞きます。1万円札を10枚持っていても、使えなければゼロと同じということです。
それから公衆電話。停電時でも使えることがあるとされていて、災害用伝言ダイヤルにかけるときの手段になります。ただしテレホンカードか硬貨が必要で、10円玉が使える。スマホしか持っていない世代には、これが盲点です。私は10円玉を20枚ほど別に袋に分けて入れました。
自動販売機も同様で、硬貨と千円札しか受け付けないものが大半です。券種の内訳を意識して用意しておくと、実際に使える確率が上がります。うちは千円札を中心に、五百円玉と百円玉、十円玉を混ぜる構成にしました。
いくら備えるか、という考え方
金額については、一般的に「3日から1週間分の生活費」を目安に挙げる情報が多いようです。家族構成や地域によって必要額は変わるので、ここは自分で計算したほうがいい。
我が家の考え方はこうです。まず、災害の直後に現金で買う可能性が高いものを書き出す。水と食料の買い足し、オムツ、乾電池、それに交通費。次に、それぞれの想定額を積む。うちの場合、水と食料で1日あたり3,000円前後、オムツが1パック1,500円ほど、電池が1,000円、移動が必要になった場合の交通費が1万円程度。これを3日から1週間で見積もると、おおよその幅が出ます。
そのうえで、大きすぎない額に留めるのも大事だと思っています。家に多額の現金を置くのは、盗難や紛失のリスクを抱えることでもある。避難所のような場所では、貴重品の管理が難しくなります。使い切れないほど持つより、券種を整えて必要な範囲で持つほうが、実際には役に立つはずです。
ちなみに私は最初、全額を千円札で用意しようとして銀行で両替しました。結果、財布に入らないほどの厚みになって、これはこれで扱いにくかった。五千円札を何枚か混ぜたほうが、かさばらず現実的でした。
防水ポーチに入れて、リュックに固定した
現金の保管でもうひとつ考えたのが、濡らさないことです。水害で浸水したり、雨の中を避難したり、リュックの中でペットボトルが漏れたり。紙幣は水に濡れると扱いにくくなるし、コピーした書類はにじんで読めなくなります。
そこで買ったのがECHTPowerの防水ポーチ 2個セットです。IP68等級で、ジッパー式の開口部を折り返して留める構造。1個を防災リュック用、もう1個を車に置く分として使っています。
気に入っているのは、透明で中身が見えることです。何が入っているか一目で分かるので、暗い中でも探しやすい。ベルトが付いていて、リュックの中で泳がないよう固定できるのも実用的でした。スマホを入れたまま画面操作もできるので、雨の日の外出で普段使いもしています。
短所を挙げると、紙幣を折らずに入れると少し窮屈です。長辺が足りるサイズを選ばないと、札を三つ折りにする必要が出る。それから、防水性能は開口部をきちんと折り返して留めることが前提なので、雑に閉めると意味がありません。うちは一度、閉め方が甘いまま風呂場に置いておいて、中に湿気が入っていました。過信しないほうがいいです。
あと、透明なので中身が外から見えるという当たり前の欠点があります。現金を入れて外から見えるのは、避難所のような場所では望ましくない。うちは中に不透明な封筒を入れて、そこに現金をまとめています。
現金と一緒に入れておくもの
ポーチには現金以外も入れています。むしろこちらのほうが後から効いてくるかもしれません。
入れているのは、健康保険証のコピー、運転免許証のコピー、母子健康手帳の必要ページのコピー、預金通帳の表紙と最初のページのコピー、それに親族の連絡先を書いた紙です。
被災して身分証を失くしても、コピーがあれば手続きが進みやすいことがあります。母子手帳は子どもの予防接種歴が載っているので、避難先で医療にかかるときに役立つ。通帳の口座番号が分かれば、通帳やカードを失っても手続きの入り口に立てます。
連絡先を紙で持つのは、スマホが使えない前提だからです。私は妻の携帯番号をそらで言えません。実家の固定電話も同じ。連絡先はスマホの中にしかない、というのは現代の標準的な弱点だと思います。紙に書いて防水ポーチに入れる。これだけで、公衆電話が使える状況で詰まなくなります。
コピーを取る作業は面倒です。私も先延ばしにしていて、結局コンビニのコピー機で10分ほどかけて済ませました。10分の作業で、災害後の手続きが少し楽になる可能性がある。費用対効果としてはかなり良いほうです。
置き場所を分散させる
最後に置き場所の話です。全部を防災リュックに入れると、リュックを持ち出せなかったときにゼロになります。
うちは3ヶ所に分けました。防災リュックの中、車のグローブボックス、それに寝室の引き出し。金額の比率はリュックに半分、あとは4分の1ずつ。就寝中に地震が来てリュックまで行けなくても、寝室に少し残っているという考え方です。
分散させると管理が甘くなるので、半年に一度の防災点検のときに全部開けて確認しています。3月と9月。このタイミングで、非常食の期限と、現金の額と、コピー類の更新をまとめてやる。保険証は年度で番号が変わることもあるので、コピーの更新は忘れやすい項目でした。
最後に
現金の備えは、買い物ではありません。銀行で下ろして、券種を整えて、袋に入れる。それだけです。お金がかかるわけでもない。それなのに、私はキャッシュレス生活の中で完全に見落としていました。
防災リュックの中身を一通り揃えたつもりの人ほど、財布の中を確認してみる価値があると思います。私の場合は812円でした。あの日に地震が来ていたら、たぶん水も買えなかった。
この記事は防災グッズの個別レビューです。在宅避難という選択肢と備え全体は在宅避難という選択肢|避難所に行かない備えのつくり方にまとめています。

