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災害用伝言ダイヤル171は、体験利用ができる日が定期的に設けられています。毎月1日と15日、正月三が日、防災週間などが体験利用日として案内されています。存在は知っていたけれど使ったことはない、という状態がずっと続いていたので、9月1日に妻と実際にやってみました。
結果から書くと、操作は簡単で、難しかったのは録音の中身のほうでした。30秒という制限の中で何を言うか決めていなかったせいで、私の1回目の録音は聞き返しても意味の取れない代物になりました。手順を覚えるより、話す内容を決めておくほうがよほど重要だった、というのがこの日一番の収穫です。
171を実際にかけてみた手順
やることは3ステップです。まず電話で「171」にかける。次にガイダンスに従って、録音なら「1」、再生なら「2」を押す。最後に、家族で決めておいた基準の電話番号を市外局番から入力する。それだけです。
ここで一番つまずきやすいのが3番目の「基準の電話番号」だと思います。これは誰の番号を入れてもいいわけではなく、家族全員が同じ番号を使わないと伝言が共有されません。Aさんが自分の携帯番号で録音し、Bさんが自分の携帯番号で再生しようとすると、別々の箱を開けているのと同じで、いつまでも見つからない。
うちは私の携帯番号を基準に決めました。固定電話は引いていないので、家の番号という選択肢がなかったからです。この番号は前に書いた紙の連絡カードにも記載してあります。夫婦2人ならまだしも、実家の両親まで含めると「どの番号だっけ」は確実に起こるので、書いておいたほうが安全でした。
録音は1件あたり30秒。録音が終わると「9」で確定、といったガイダンスが流れるので、その通りに押していけば終わります。私が最初に思っていたより、ずっと機械的でした。ボタンを押す回数は全部で5〜6回程度です。
30秒が、想像よりずっと短い
問題は中身でした。私の1回目の録音を、あとで妻に再生してもらったんですが、内容がこうです。
「えー、私です。今、家にいます。いや、家というか、揺れたときは家にいて、それで今も一応家にいるんだけど、外の様子はまだ見てなくて、あー、そうだ、息子は無事です。えっと、それで」
ここで30秒が終わりました。妻の感想は「で、これからどうするの?」でした。まったくその通りで、一番伝えるべき「次に自分がどう動くか」が入っていません。要らない言い直しに時間を使い切ってしまった。
普段の電話なら相手が聞き返してくれます。伝言は一方通行なので、聞き返しがない。この違いを完全に舐めていました。30秒は、言い淀む余裕がない長さです。実測してみると、私が普通の速さで話して収まるのは日本語で110〜120字くらいでした。原稿用紙半分にも届きません。
2回目は言うことを決めてから録音しました。「私です。9月1日15時、自宅、全員無事。これから小学校へ移動します。次は18時に入れます」。これで20秒。8秒余りました。
何を吹き込むか、4つだけ決めておく
2回目でうまくいったのは、話す順番を先に決めたからです。うちで固定したのは4つです。
- 誰が(名前と、一緒にいる人)
- どこに(現在地)
- いつの情報か(日付と時刻)
- 次にどうするか(移動先と、次に伝言を入れる時刻)
この中で、事前に気付いていなかったのが「いつの情報か」です。伝言は保存期間があるので、複数の伝言が並ぶことになります。3時間前の「無事です」なのか、10分前の「無事です」なのかで、意味がまるで違う。日付と時刻を先頭に入れるだけで、伝言の価値が変わりました。
もう1つ、「次に伝言を入れる時刻」を入れておくのが妻のアイデアで、これが良かった。相手はその時刻まで待てばいいと分かるので、無駄に何度も確認しにいかずに済みます。回線の混雑を考えると、確認回数が減るのは本人以外にとってもプラスです。
逆に、削っていいと判断したのは感情の部分でした。心配だとか、気をつけてとか、言いたくなるんですが30秒には入りません。伝言は連絡であって会話ではない、と割り切ったほうが実用的でした。
web171との違いは「文字で残るが、通信が要る」
171には、インターネット版の「web171」もあります。同じ日に、こちらも試してみました。
使い方は、ブラウザでweb171のページを開き、基準の電話番号を入力して、伝言を文字で登録するというもの。171と同じく、体験利用日に試せます。
音声版との一番の違いは、文字で残ることです。これは想像以上に大きかった。避難所のようなうるさい場所でも読めるし、聞き返しの必要がない。住所や施設名のような、耳では聞き取りにくい固有名詞を正確に伝えられます。私が音声で「◯◯第二小学校」と言ったとき、妻には「第二」の部分が聞き取りにくかったそうです。文字なら起きない問題です。
あとから見返せるのも利点でした。音声は再生し直すのが面倒ですが、文字なら画面に残っている。スクリーンショットを撮っておけば、通信が切れた後でも読めます。
ただし、web171はインターネットにつながらないと使えません。ここが決定的な弱点です。停電でWi-Fiのルーターが落ちれば自宅の回線は死にますし、モバイル回線も混雑や基地局の障害で不安定になる。一方の171は電話回線があれば使えるので、公衆電話からでも操作できます。
どちらが上という話ではなく、どちらも使えるようにしておく、という結論になりました。うちのルールは「まずweb171、だめなら171」です。文字のほうが情報量が多いので第1候補、通信が死んでいたら音声に切り替える。ちなみに音声とWeb間で伝言を相互に確認できる仕組みがあるとされていますが、そこは条件によるようなので、うちは「両方に入れる」で運用することにしました。
実家の両親には、電話で説明しても伝わらなかった
体験利用日の翌日、実家の母に電話でやり方を説明しました。これが盛大に失敗しました。
「171にかけて、1を押して、番号を入れて」と口で説明したところ、母から出てきた質問が「171にかけるって、どこにかけるの?」でした。電話番号として171の3桁だけをダイヤルする、という発想が最初の壁だったんです。普段11桁でかけているので、3桁を「番号」として認識しづらい。
次の壁が「1を押す」でした。通話中に数字ボタンを押すという操作を、母はほとんどしたことがなかった。スマホの通話画面でキーパッドを出す方法から説明が必要でした。画面が見えない状態で操作するので、こちらからは何が起きているか分かりません。20分話して、結局その場では成功しませんでした。
解決策は原始的で、手順を紙に書いて郵送しました。文字は大きめ、1行1動作、押すボタンだけを大きく書く。「171 → 1 → 090-××××-×××× → メッセージ → 9」という並びを、A4に縦書きで印刷したものです。次の体験利用日に、その紙を見ながらやってもらったら1回で成功しました。口頭の説明より、手元で見られる紙のほうが確実でした。
連絡が取れないとき、最後は見つけてもらうしかない
ここまで書いてきたのは全部、通信が生きている前提の話です。伝言ダイヤルも公衆電話も、電話網が動いていなければ使えません。倒壊した建物の中や、真っ暗な避難路で、こちらの居場所を知らせる手段は別に要ります。
うちで用意しているのは、反射材付きのホイッスルキーホルダーです。私の家の鍵と、妻のマザーズバッグのファスナーに1つずつ付けています。声を出し続けるのは体力を消耗するので、笛のほうが持つ、という単純な理屈です。反射材が付いているのは、ライトの光を当てられたときに気付いてもらうため。
不満もあります。音が想像よりずっと高くて大きい。マンションの部屋の中で試し吹きをしたら、隣の住戸に確実に聞こえるレベルの音量でした。息子が寝ていた時間だったので妻に本気で怒られています。結局、動作確認は近所の河川敷まで持っていってやりました。防災用として正しい音量なんですが、確認する場所には困ります。
もう1つ、反射材はいずれ曇ります。うちのはまだ半年ほどですが、鍵と一緒にポケットで擦れる場所に付けているので、表面に細かい傷が入り始めました。反射性能が落ちているかは目視では分かりませんが、消耗品として何年かで交換するものだと考えています。
それと、当たり前ですが笛は連絡手段ではありません。誰かが近くにいて、聞こえる範囲にいるときにしか機能しない。伝言ダイヤルの代わりにはならないので、あくまで最後の一手です。
年に1度は、家族で押してみる
1回やってみて分かったのは、手順そのものは5分で覚えられるが、5分で覚えたものは1年で忘れる、ということです。私は体験利用の3週間後にもう一度やってみたんですが、基準の番号を入れる場所でつまずきました。3週間で忘れています。
なので、うちは年に2回やることにしました。9月1日と1月1日。どちらも体験利用日に該当していて、覚えやすい日付です。カレンダーアプリに繰り返し予定を入れて、通知が来たら夫婦で1回ずつ録音と再生をやる。5分で終わります。
息子が話せるようになったら、そのときは3人でやるつもりです。子どもに30秒で状況を説明させるのは相当に難しいはずですが、練習しておく価値はある。
実際に使う日が来ないのが一番いいわけですが、来たときに「やり方が分からない」で立ち止まるのは避けたい。年に10分の練習で、その可能性をだいぶ減らせます。防災用品を買い足すより安く、そして今日から手元でできることでした。
この記事は防災グッズの個別レビューです。在宅避難という選択肢と備え全体は在宅避難という選択肢|避難所に行かない備えのつくり方にまとめています。

