水がいらない衛生用品|歯みがきと体拭き

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去年の秋、マンションの受水槽の清掃で半日だけ断水したことがありました。事前に告知が来ていたので水は汲み置きしていたし、昼食はレトルトで済ませるつもりでいた。備えは万全のはずでした。

それで何に困ったかというと、朝食のあとに歯が磨けなかったことです。汲み置きの水はあったけれど、あれを口をゆすぐために使うのは正直もったいなく感じた。結局その日は昼まで口の中が気持ち悪いまま過ごして、在宅の打ち合わせでも集中しきれませんでした。たった半日でこれです。

食料と水の備蓄ばかり数えていて、衛生用品をほとんど考えていなかった。この記事は、その反省から水を使わない衛生グッズを一通り買って、1日試してみた記録です。結論を先に言うと、本物の歯みがきや入浴には及びません。それでも備えておく価値はある、という話をします。

断水して最初に困るのは、食事より口の中だった

備蓄リストを作るとき、私は食料と水から着手しました。カロリーが計算できるし、賞味期限という明確な管理指標がある。理屈っぽい人間には扱いやすいんですよね。逆に衛生用品は「何日分」という単位が決めづらくて、後回しにしていました。

でも実際に断水してみると、食事は1食抜いても平気でした。おなかは空くけれど、行動には支障が出ない。一方で口の中の不快感は、時間が経つほど気になる。しかも解消する手段がない。この非対称性は想像していませんでした。

あとから調べたら、避難所の環境で早い段階から問題になるのは衛生面だという指摘は多くありました。トイレ、手指、口腔。どれも「命に関わらないから後回し」に見えて、実際には数日単位で健康に響いてくる領域です。

口腔ケアを飛ばすと何が起きるとされているか

ここは慎重に書きます。避難生活での口腔ケアについてよく言われるのは、ケアを怠ると誤嚥性肺炎のリスクが高まるとされているという点です。口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に気管に入ることで肺炎を起こす、という説明で、特に高齢者で問題になりやすいとされています。

過去の震災後に、避難生活を送っていた高齢者の肺炎が増えたという報告もあり、歯科医師会などが避難所での口腔ケアの重要性を発信しています。私は医療の専門家ではないので断定は避けますが、複数の公的な資料が同じ方向を指している以上、軽視すべきではないと判断しました。

我が家に高齢者はいませんが、実家の両親は60代です。それに、乳児がいる家庭では別の理由もあります。親が体調を崩すと、育児が回らなくなる。子どもの世話をする人間が寝込むリスクを下げるという意味でも、口腔ケアは削れない項目だと思うようになりました。

ちなみに、水がまったくない状況でも、歯ブラシで物理的にこすって、そのあとティッシュで拭き取るだけで一定の効果があるとされています。道具がなくても、まず「こする」を諦めないほうがいい。

液体歯磨きと洗口液は別物。歯みがきシートも含めて整理する

買い物を始めて最初につまずいたのがここでした。似た商品が並んでいて、違いが分からない。整理するとこうなります。

  • 液体歯磨き: 口に含んですすいだあと、そのまま歯ブラシで磨く。ペースト状の歯磨き粉の代わりで、磨く工程が必要
  • 洗口液(マウスウォッシュ): 磨いたあと、または単独ですすぐ。磨く工程は含まない
  • 歯みがきシート: 指に巻いて歯の表面を拭き取る。うがい不要

最初、私は洗口液を買えば歯みがきの代わりになると思っていました。違いました。洗口液は歯垢を落とす力がないので、あれだけで済ませると数日で口の中がざらつきます。断水中に本命になるのは液体歯磨きのほうで、これで口を湿らせて歯ブラシで磨けば、水を使わずに通常に近いケアができます。

歯みがきシートは、乳児や、歯ブラシを使えない状況の補助です。うちの子はまだ下の前歯が2本生えたところなので、普段からガーゼで拭いていて、その延長で使えます。

個包装タイプを備蓄に回した理由

ボトル入りの液体歯磨きも検討したんですが、備蓄用としては個包装タイプを選びました。理由は3つあります。

1つ目は、家族で共有しづらいこと。ボトルから直接口をつけるわけではないとはいえ、断水中に計量キャップを洗えないのは面倒です。個包装なら1回分がそのまま出せます。2つ目は、リュックに入れられること。ボトルは重くて場所を取りますが、個包装なら防災リュックのポケットに10本入れても数十グラムです。3つ目は残量管理。ボトルは「たぶんまだある」で放置しがちですが、本数なら数えられます。

買ったのは1包12ml程度の使い切りタイプで、50個入りで2,000円弱。1本あたり40円くらいの計算です。玄関の防災リュックに10本、洗面所のストックに残りを置いています。

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短所も書いておきます。まず1本あたりの量が少ない。12mlは思っているより少なくて、しっかりすすごうとすると1回で使い切ります。1日2回として1人1日2本、3人家族の3日分で18本。50個入りでも1週間ちょっとです。あと、個包装なのでゴミが出ます。断水中はゴミの収集も止まる可能性があるので、地味に効いてきます。

もう一つ、これは私の失敗ですが、最初にアルコール入りの刺激が強いタイプを買ってしまいました。普段使いなら気にならないんですが、疲れているときに使うとしみる。備蓄用は低刺激・ノンアルコールのものを選び直しました。子どもと共用する可能性も考えると、こちらのほうが無難です。

体拭きシートと清拭タオル。子ども用と大人用は分けたほうがいい

身体のほうも試しました。使ったのは大判の体拭きシートで、1枚30cm四方くらいのもの。全身を拭くのに大人1人で4〜5枚必要でした。首と脇と背中で1枚ずつ、下半身で2枚。1回でこれなので、3人家族が3日間毎日拭くと40枚以上要ります。20枚入りのパックを2つ買って足りない計算で、あとで買い足しました。

ここで分かったのが、子ども用と大人用は分けたほうがいいということです。大人用の体拭きシートはメントール入りで清涼感が強いものが多く、乳児の肌には刺激が強すぎます。うちは子ども用にはおしりふきを流用することにしました。おしりふきはもともと低刺激で無香料、しかも普段から消費しているのでローリングストックが成立します。これは結果的に一番うまくいった判断でした。

お湯が使える状況なら、清拭タオルのほうが快適です。タオルを濡らして絞り、レンジや鍋で温める。カセットコンロが使えるなら、この方法が一番さっぱりします。ただし断水中はタオルを洗えないので、使い捨て前提でフェイスタオルを何枚か備えておく形になります。

実際に1日、水を使わずに過ごしてみた

土曜日に一度、水道を使わない日をやってみました。飲み水はペットボトル、それ以外の水は一切使わない。妻には事前に説明して、子どもの世話に関わる部分だけは例外にしています。

朝は液体歯磨きで歯を磨きました。これは想像以上に普通でした。口の中はちゃんとすっきりするし、歯のざらつきも取れる。水道水ですすげないぶん、味が口に残る感じはありますが、許容範囲です。

問題は身体のほうでした。夜に体拭きシートで全身を拭いたんですが、さっぱり感は風呂に遠く及びません。拭いた直後は冷たくて気持ちいいものの、30分もすると背中がべたつく感覚が戻ってきます。特に夏場は厳しい。エアコンが使えない停電時なら、もっと厳しいはずです。

それでも「何もしないよりは圧倒的にまし」でした。これが一番大事な発見だったと思います。100点の解決策を探すと何も買えなくなるけれど、60点の手段を複数持っておけば、数日は乗り切れる。備蓄というのはそういうものなんだろうな、と考え直しました。

最後に

今の我が家の衛生用品は、個包装の液体歯磨き50本、体拭きシート60枚、おしりふきを常時3パック、歯みがきシート1箱、という構成です。金額にすると全部で6,000円くらい。食料と水の備蓄に比べれば安いのに、抜けていた領域でした。

もし何から手をつけるか迷うなら、まず液体歯磨きだと思います。1袋40円で、リュックに入れるのに場所も取らない。半日の断水でも効果が実感できる数少ない備えです。

そして一度、休日に試してみることをおすすめします。買っただけで使ったことがないと、本番で使い方に迷います。私も1日やってみて、必要な枚数の見積もりが倍近くずれていたことに気づきました。

この記事は防災グッズの個別レビューです。在宅避難という選択肢と備え全体は在宅避難という選択肢|避難所に行かない備えのつくり方にまとめています。

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