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標高320mの、地元では「散歩コース」と呼ばれている山です。ガイドの看板には往復2時間と書いてありました。9月の連休に、生後6ヶ月の子を抱っこして登って、実際にかかったのは3時間半。距離も標高差も大したことはないのに、平地を3時間半歩くのとはまったく別の疲れ方をしました。抱っこ紐で山道を歩くというのは、普段の散歩の延長ではなかったです。そのとき何がきつくて、次はどう変えるつもりなのかを書いておきます。
看板の「往復2時間」を1.5倍かかった
行ったのは連休の中日、朝8時半に登山口の駐車場に着きました。この時期にしては涼しくて、車の温度計で22度。妻と3人で、子どもは私が前抱きです。体重は6ヶ月健診の時点で8.1kgでした。抱っこ紐と水と着替えを足すと、私は10kg以上を身につけて登っていたことになります。
登り始めて15分で、これは想定と違うと気づきました。息が上がるのではなく、腰の一点が痛い。平日に近所を1時間散歩しても何ともないのに、傾斜がつくだけでここまで変わるのかと。登りでは自分の重心が前に出るので、抱っこした子どもの重さが腰の同じ場所に集中し続けます。平地なら真下に落ちていた荷重が、斜めにかかる。頂上まで、看板の目安50分のところを80分かけました。
登りは腰に集中、下りは膝に全部来る
登りがきついのは覚悟していました。想定外だったのは下りです。
下りでは一歩ごとに、自分の体重と子どもの体重を合わせた分を、片脚の膝で受け止めることになります。しかも抱っこしていると、バランスを取るために膝をゆっくり曲げて着地する動きになる。手ぶらならポンと降りられる段差を、一段ずつ丁寧に降りるわけです。これが効きました。下山の後半、階段状に木で組まれた区間で、太ももが小刻みに震えてきたのが自分でも分かりました。
翌日痛かったのは、腰と、太ももの前側と、右の肩です。肩だけ左右差が出たのは、あとで書くヒップシートの使い方が原因でした。
自分のつま先が見えない、という怖さ
山道でいちばん怖かったのは、実は体力ではなく視界でした。
前抱きの抱っこ紐をつけると、真下を見ても自分のつま先が見えません。平地の舗装路ならそれで困らない。けれど山道は、木の根が出ていたり、雨で削れて段差になっていたり、濡れた落ち葉が乗っていたりします。足元を確認できないまま、記憶と足裏の感覚だけで踏んでいくことになる。
実際に一度、根に足を引っかけました。転びはしませんでしたが、上半身が前に泳いだ瞬間に、とっさに両手で子どもを抱え込んでしまった。つまり手が受け身に使えないということです。自分だけなら手をついて済む転倒が、抱っこ中は子どもを抱えたまま倒れることになる。この一回で、コースの難易度に対する自分の基準がはっきり下がりました。
対策としてやったのは、歩幅を普段の3分の2くらいに落とすこと。それと、少し先の地面を見て足を置く場所を決めてから進むこと。速度は落ちますが、これしかないと思っています。
ヒップシートは平地の道具だと分かった
この日に持っていったのは、POMULUのヒップシートです。楽天で11,900円でした。腰に巻いた台座に子どもを座らせるタイプで、耐荷重は20kg。ショルダーバッグとしても使える2WAY仕様で、台座の中に小物を入れられるのが気に入って買ったものです。近所の散歩や、スーパーで抱っこと歩きを何度も切り替える場面ではとにかく速くて、家では完全に主力でした。
ただ山道では、この形が裏目に出ました。座面に乗せるタイプは、構造上片手を子どもに添え続けることが前提です。平地の数分ならそれでいい。山では、この片手がずっと塞がっているのが問題になります。
急な階段区間に手すりのロープが張ってあったんですが、私はそれを掴めませんでした。片手は子ども、もう片方はバランス用にしか使えない。木につかまることもできない。傾斜と、1時間を超える時間。この2つが重なると、肩ベルトで両肩に分散させるタイプの抱っこ紐のほうが明らかに安全でした。妻が念のため持ってきていた肩ベルト付きのものに、頂上で交換しています。交換後は両手が空いて、精神的な余裕がまるで違いました。
もうひとつの反省が、片方の肩だけで支え続けたこと。ヒップシートの肩ベルトを右だけに掛けて登ったので、翌日は右の僧帽筋だけがはっきり痛かったです。左右を入れ替える発想がその場でなかったのは、単純に私のミスでした。
20分から30分おきに止まる、という運用に落ち着いた
途中からは、時間を決めて止まるようにしました。目安は20分から30分に一度です。理由は自分の休憩ではなく、子どものためでした。
抱っこ紐の中の子どもは、同じ姿勢で固定されたままになります。歩いているうちは揺れで寝ていることが多いんですが、脚の付け根に体重がかかり続けるのは大人でも嫌なはずで、止まるたびに一度降ろして、抱き方を変えたり、脚の位置を直したりしました。麦茶は妻が担当で、こちらも休憩のたびに少しずつ。
止まる場所は、必ず日陰を選びました。9月とはいえ、日向と木陰では体感がまったく違います。この日は22度スタートで昼前には27度まで上がりましたが、木陰に入ると風が通って涼しい。逆に、稜線に出て日を遮るものがなくなる区間が10分ほどあって、そこは短いのに一番消耗しました。
抱っこは自分と子どもの間に熱がこもる
気温以上に効いたのが、密着している面の熱です。
抱っこ紐で前抱きをしていると、私の胸と子どもの背中が張りついた状態で何時間も歩くことになります。ここは風が一切通りません。休憩で降ろしたとき、子どもの背中が汗でぐっしょりだったのが正直ショックでした。私の腹側も同じくらい濡れていて、要するに2人分の熱がその隙間にこもっていたわけです。
POMULUは作りがしっかりしている代わりに生地が厚めで、夏場は素直に暑いです。安いものでもないので気軽に買い替える気にはなりませんが、季節によって向き不向きがはっきりあるのは使ってみて分かったことでした。
やったのは、休憩のたびに背中に手を入れて汗を確認して、濡れていればガーゼで拭いて肌着を替えること。この日は往復で2回替えました。降ろしたときに風に当てて乾かすのも、面倒でも毎回やったほうがいい。汗が引くときに冷えるほうが怖いので。
次は、遊歩道までにする
帰りの車で妻と話して決めたのは、しばらくは整備された遊歩道までにしよう、ということでした。木の根や段差がなく、手すりのある階段で、幅が広くてすれ違いに気を使わない道。それなら片手が塞がっていても対処できます。
時間の見積もりも変えました。看板の所要時間を1.5倍で計算する。今回それで3時間半だったので、実感とも合っています。そして引き返す基準を、登る前に決めておくこと。今回は何も決めずに登って、頂上が近いからという理由だけで進んでしまった場面がありました。次からは、時刻で切ります。11時になったらその場所から引き返す、という決め方なら迷いようがない。
抱っこして山に登ること自体は、悪くない体験でした。頂上で降ろして、風の音がするところで座っていた15分は、近所の公園にはない時間だった。ただそれは、登り切ったからではなく、安全に降りてこられたから言えることでもあります。装備を足すより先に、コースを削るほうが確実だと今は思っています。
この記事は外遊び用品の個別レビューです。公園に持っていくもの全体は子連れの外遊び装備|公園に何を持っていくかにまとめています。

