停電時の冷蔵庫|中身を何時間もたせられるか

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停電したとき、冷蔵庫の中身をどうするか。これは考えたことがありませんでした。水と食料と電源の備蓄ばかり気にしていて、いま冷蔵庫に入っている数万円分の食材のことは頭になかった。

去年の夏、雷でうちのマンションが40分ほど停電しました。そのとき妻が真っ先に「冷蔵庫開けないで」と言ったんですが、私はその理由をちゃんと説明できなかった。あとから調べて、なるほどと思った次第です。

この記事は、停電時に冷蔵庫の中身をどれだけもたせられるか、そのために平時から何をしておくかをまとめたものです。目安の時間も書きますが、条件で大きく変わるので、幅のある数字として読んでもらえればと思います。

まず、開けない。開閉1回のコストが大きい

停電時の鉄則はこれに尽きます。扉を開けなければ、冷蔵庫は保冷箱として機能し続ける。開ければそのぶん冷気が抜けて、外の空気が入る。

冷気は空気より重いので、扉を開けると下に流れ落ちていきます。冷蔵室の扉を10秒開けただけでも、庫内の温度は数度上がるとされています。冷凍室は引き出し式が多いぶん冷気が逃げにくいものの、開ければ同じことです。

厄介なのは、停電中は庫内が何度になっているか分からないことです。電源が落ちているので温度表示も出ない。確認したくて開ける、開けたから温度が上がる、という悪循環になります。

だから我が家では、停電したらまず冷蔵庫の扉に養生テープを1本貼ることにしました。物理的に開けにくくする、というより、「開けるかどうか」を無意識に判断させないためです。テープを剥がすというひと手間があると、本当に必要なときだけ開けるようになる。子どもがいる家庭なら、扉ロックがそのまま使えます。

それと、停電した時刻をメモしておく。あとで食べるか捨てるかを判断するとき、経過時間が唯一の手がかりになります。スマホのメモに時刻を打つだけです。

冷蔵室は数時間、冷凍室は半日から1日

目安としてよく言われるのは、扉を開けなければ冷蔵室で2〜3時間、冷凍室で半日から1日程度という数字です。ただ、この数字は条件でかなり動きます。

大きく効くのは三つ。外気温、庫内の詰まり具合、断熱性能です。冬の停電と真夏の停電では話がまったく違う。室温が35℃ある部屋に置かれた冷蔵庫と、15℃の部屋の冷蔵庫では、冷気が奪われる速度が違います。夏場は上の目安より短く見積もったほうがいい。

庫内の詰まり具合も効きます。これは次の章で詳しく書きますが、冷蔵室はスカスカのほうが効率がよく、冷凍室はぎっしりのほうが停電に強いという、逆の性質があります。

断熱性能は機種によります。最近の省エネモデルは真空断熱材を使っていて、10年前の機種より明らかにもちがいい。うちの冷蔵庫は5年前のモデルですが、40分の停電では冷凍室の氷が表面すら溶けていませんでした。

実際どうなるかは、自分の家の冷蔵庫で一度試すのが確実です。ブレーカーを落として2時間放置し、冷蔵室の温度計を見る。うちは休日の午前中にやってみて、2時間で冷蔵室が5℃から11℃まで上がりました。夏場ならもっと速い。この数字を知っておくと、停電時に「あと何時間もつか」の見当がつきます。

冷凍庫は、ぎっしり詰まっているほうがもつ

停電対策として一番効果が大きかったのがこれです。冷凍室に隙間があると、そこが空気で埋まって温度が上がりやすい。凍った物そのものが保冷剤として働くので、詰まっているほど冷たさが長持ちします。

うちは冷凍室の空きスペースに、500mlのペットボトルに8分目まで水を入れて凍らせたものを3本置いています。8分目なのは、満タンにすると凍ったときに膨張してボトルが変形するからです。一度満タンで入れて、翌朝ボトルが妙な形になっていて学びました。

この氷ボトルは一石三鳥で、普段は冷凍室の蓄冷材、停電時はクーラーボックスの保冷剤、溶けたら飲み水になります。ただし飲用にするなら水道水を入れて、数ヶ月ごとに入れ替える。凍らせた水を長期間置きっぱなしにするのはやめたほうがいいです。

あわせて、保冷剤も入れています。うちが使っているのはロゴスの氷点下パックというシリーズで、一般的な保冷剤より低い温度帯を維持する設計のものです。凍らせるのに時間はかかりますが、その代わり長持ちします。

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不満を書いておくと、これは硬く凍るので、食材の隙間に押し込むような使い方ができません。板状にかさばるので、冷凍室が満杯だと入れる場所に困る。それから、完全に凍らせるのに冷凍庫で丸一日以上かかります。前日に思い立って使う、という運用はできない。常に凍らせておく前提の道具です。

逆に良かったのは、クーラーボックスに移したときの持続時間です。うちのクーラーボックスは5.7Lの小型(2,508円)ですが、氷点下パックを1枚入れておくと、真夏でも半日は明らかに冷たさが違いました。100円ショップの保冷剤とは別物です。

食べる順番は、停電した瞬間に決まる

もたせる工夫と同じくらい大事なのが、もたないものから食べるという順番の話です。

優先順位はシンプルで、傷みやすいものが先。生肉、生魚、要冷蔵の惣菜、開封済みの乳製品。このあたりは停電したその日のうちに、加熱して食べてしまうのが基本です。カセットコンロがあれば焼く、煮る。うちは40分の停電のとき、翌日使う予定だった鶏もも肉を先に焼いて夕飯にしました。

次が、卵、豆腐、かまぼこ類。そのあとに野菜、そして最後が冷凍食品です。冷凍室のものは一番長くもつので、慌てて食べない。むしろ溶けかけたところで加熱調理に回します。

逆に、常温で問題ないものは冷蔵庫から出してしまっていい。未開封の調味料、根菜、卵は季節によりますが冷暗所で置ける。冷蔵庫の中身を減らすこと自体が、残りのものを冷やす助けになります

子どもがいる家庭でひとつ注意しておきたいのが、ミルクや離乳食の扱いです。開封済みの液体ミルクや、作り置きの離乳食は、常温に置いた時点で判断が難しくなります。うちは停電したら開封済みのものは全部処分すると決めました。もったいないですが、乳児で食あたりを起こすリスクとは比べられない。

クーラーボックスへの避難は、優先順位を決めてから

停電が長引きそうなら、どこかのタイミングで中身をクーラーボックスに移します。うちの想定では、停電から3時間経って復旧の見込みが立たないときがその判断点です。

ここで問題になるのが、クーラーボックスの容量です。うちのは5.7Lなので、冷蔵庫の中身は到底入りません。だから何を入れるかを先に決めておく必要がある。

我が家の第一優先は、離乳食の冷凍ストックです。生後6ヶ月で、おかゆと野菜のペーストを製氷皿で凍らせて小分けにしてある。これが1週間分あって、失うと作り直しに何時間もかかります。しかも断水していたら作れない。金額でいえば大したことはないのに、代替が一番効かないのがここでした。

次が凍らせた母乳と、開封前の液体ミルク。液体ミルクは常温保存なので本当は冷やす必要がないんですが、夏場の室温を考えて入れることにしています。大人の食材は正直、後回しです。

実際にやってみて分かったのは、移し替え作業そのものが冷気を逃がすということ。冷凍室を開けて、中身を選んで、箱に詰める。この間ずっと扉は開いています。だから移すと決めたら迷わず短時間で終わらせる。何を入れるかを事前に決めておくのは、そのためでもあります。

迷ったら食べない。夏場は特に

最後に、判断の話です。停電が長引いたあと、この食材を食べていいのかという場面が必ず来ます。

基本の線引きとして、肉や魚が10℃を大きく超える温度に数時間置かれていたなら、食べないほうが無難だとされています。見た目やにおいで判断しようとする人が多いんですが、食中毒を起こす菌の多くは、味もにおいも変えません。「大丈夫そうに見える」は根拠にならない。

特に夏場です。室温30℃を超える環境なら、冷蔵室の中身は数時間で危険域に入ります。冷凍品も、完全に解けて常温になったものは同じ扱いです。一度完全に解けた食品を再冷凍するのも避けたほうがいいとされています。

加熱すれば大丈夫、という理解も危ういところがあって、菌そのものは加熱で減っても、すでに作られた毒素は熱で壊れないものがあります。ここは加熱を万能だと思わないほうがいい。

乳児や高齢者がいる家庭では、この判断をさらに慎重にする理由があります。うちは子どもの口に入るものは、少しでも迷ったら捨てると決めています。数千円の食材と、乳児の食中毒を天秤にかける場面ではない。

最後に

停電時の冷蔵庫対策は、停電してからできることがほとんどありません。やれるのは「開けない」ことだけで、あとは平時にどう仕込んでおいたかで結果が決まります。

やっておいてよかったのは、冷凍室に氷ボトルと保冷剤を常備したこと、クーラーボックスに入れるものの順番を決めたこと、そして一度ブレーカーを落として自宅の冷蔵庫の実力を測ったこと。この三つです。どれも週末の1時間で終わります。

ついでに言うと、冷凍室をぎっしりにしておくのは平時の電気代にも効きます。防災のための特別な行動ではなく、詰め方の癖を少し変えるだけ。そういう対策は続くので、我が家では一番定着しました。

この記事は防災グッズの個別レビューです。在宅避難という選択肢と備え全体は在宅避難という選択肢|避難所に行かない備えのつくり方にまとめています。

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