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3年前、私は会社支給のMacBook Proに麦茶をこぼしました。マグカップを倒したのではなく、腕を伸ばしたときに肘が当たって、コップの縁から半分ほどがキーボードの左半分に流れ込んだ形です。すぐ電源を落として逆さにして、結果的には無事でしたが、情シスに報告して数日間別のマシンを借りました。それ以来、机の上に置く飲み物には条件をつけています。フタがあること。それだけです。味も温度も、その次でした。
こぼす確率は、思っているより高い
1回やったから慎重になった、という話ではないんです。むしろ在宅勤務になってから、こぼすリスクは上がりました。理由は3つあります。
ひとつはオフィスより机が狭いこと。うちは2LDKの賃貸で、寝室の一角に幅120cmのデスクを置いています。モニターとキーボードとトラックボールとメモ帳を並べると、飲み物の置き場所は右手前の10cm四方くらいしか残りません。腕の可動域の真ん中です。
ふたつめは、子どもがいること。生後6ヶ月になってから、抱っこしたまま片手でSlackを返す場面が普通にあります。子どもは手を伸ばします。届く範囲にコップがあれば、まず掴もうとする。倒れるまでが速い。
みっつめは、集中しているときほど自分の腕の位置を把握していないこと。ビルドが通らなくてログを追っているときに、無意識にキーボードから手を離して大きく伸びをする瞬間があります。あの動きが一番危ないです。
つまりこぼすかどうかは注意力の問題ではなく、机の面積と生活の形の問題だと私は考えました。注意力で解決しようとすると、いつか失敗します。
フタなしを諦めるまでに、2回買い替えている
最初に買ったのは、フタなしの真空断熱タンブラーでした。ステンレスの二重構造で、300mlくらい。保温性は文句なしで、コーヒーが1時間くらい温かいままだったのは感動しました。ただフタがないので、根本の不安は消えません。
次に試したのが、シリコンのフタが後付けできるタイプ。フタは付いたのですが、これが密着が弱くて、少し斜めにしただけで外れました。子どもがコップを掴んで持ち上げたときに、フタだけ残って中身が落ちる。本末転倒です。3ヶ月で使うのをやめました。
ここで学んだのは、フタは本体とセットで設計されていないと意味がないということでした。後付けのフタは「乗っているだけ」で、倒れる方向の力には無力です。
ちなみにこの2つの失敗で、合計6,000円ほど使っています。最初から本体一体型のフタ付きを買っていれば、その半分以下で済んだ計算です。安いほうから順番に試すのが常に正解とは限らない、という当たり前の話を、実費で学びました。
サーモスの400mlに落ち着いた理由
いま使っているのは、サーモスの真空断熱タンブラー、フタ付きの400mlです。JDP-401という型番で、私が買ったのはミルクブラウンという色。ステンレス魔法びん構造の本体に、スライド式の開閉フタが最初から組み合わさっています。
選んだ理由は単純で、フタが本体にねじ込みで固定されるからです。倒しても、フタが外れて中身が全部出るということが起きない。実際に一度、机の上で肘を当てて倒しました。転がって、飲み口の小さな開口から数滴出ただけで済みました。あの数滴を見た瞬間に、この買い物は元を取ったと思っています。
容量も大事でした。300mlだと、私の在宅の午前中に足りません。2回汲みに行くことになります。400mlだと、8時半に淹れたコーヒーで昼まで持ちます。500mlという選択肢もあったのですが、机の右手前の10cm四方に置くには直径が大きすぎるのと、重くなるので400mlにしました。フタを閉めて満水にした状態で、実測でだいたい600g弱です。
注意すべきは「完全密閉ではない」ということ
ここは誤解しやすいところなので、はっきり書いておきます。このフタは飛沫やホコリを防ぐためのもので、水筒のような完全密閉ではありません。逆さにすれば漏れます。カバンに入れて持ち歩く用途には使えません。
私は最初これを分かっていなくて、公園に行くときにカバンに入れました。中でうっすら傾いて、飲み口から少しずつ漏れて、内ポケットが濡れていました。持ち運びたいならフタが完全にロックされるボトルを別に買うべきで、これは机の上専用です。
それでも私にとっては十分でした。求めているのは「倒れたときに一気に全部出ないこと」であって、「逆さにしても1滴も出ないこと」ではないからです。机の上でコップが逆さになる状況は、まず起きません。
もうひとつ。フタのスライド部分は分解して洗えますが、パッキンの溝にコーヒーの色が残ります。私は週に1回、パッキンを外して漂白剤に浸けています。これを怠ると、2ヶ月くらいで溝が茶色くなりました。
保温時間と、結露しないことの副次的な効果
公称のスペックとしては、熱いものは長時間保温、冷たいものは保冷という真空断熱タンブラーの標準的な性能です。私の実感で言うと、朝に淹れた90度前後のコーヒーが、1時間後にちょうど飲みやすい温度、2時間後でもぬるいと感じない程度、3時間経つと常温寄りになります。フタを閉めているぶん、フタなしの前のタンブラーより明らかに長持ちしています。
そして意外に効いたのが、結露しないことでした。夏に麦茶や氷を入れても、外側に水滴がつきません。真空断熱なので当然といえば当然なんですが、これが机の上ではかなり大きい。
以前はガラスのコップを使っていて、下に敷いたコースターが常に湿っていました。書類を近くに置くと端がふやける。ノートの角が波打つ。そういう小さな被害が積み重なっていたのが、まるごと消えました。倒す事故を防ぐために買ったのに、日常的な効果としてはこちらのほうが頻度が高いです。
4,000円弱を、保険料として払っている感覚
価格帯としては、フタ付きの真空断熱タンブラーは3,000〜4,000円くらいです。100円ショップのコップと比べれば高い。ただ、私が守ろうとしているのはキーボードとMacBookで、そちらは桁が2つ違います。壊さなくても、拭いて乾かして復帰を待つ時間だけで半日は溶けます。
不満を挙げるなら、飲み口の開口が小さいので氷が入れにくいことと、食洗機に対応していない点です。うちは手洗いが前提なのでそこまで困っていませんが、洗い物を全部食洗機に入れたい人には向きません。あとステンレスなので、机の角に当たると本体側ではなく机側が凹みます。これは実際にやりました。
使い始めて7ヶ月ほど経ちますが、キーボードの周りが濡れたことは一度もありません。倒したのは前述の1回だけですが、子どもを抱いたまま片手で机を触る場面は週に何度もあって、そのたびに「これはフタがあるから大丈夫」と思える。その安心のぶん、机の上に飲み物を置くこと自体をためらわなくなりました。以前は危ないからと床に置いていて、今度はそれを蹴りそうになっていたので、置き場所の問題まで含めて片づいた形です。
それでも机の上に飲み物を置き続ける以上、フタは要るという結論は変わっていません。麦茶をこぼしたあの日から、机の上で液体がむき出しになっている時間をゼロにしたかった。いまはその状態になっています。
この記事は在宅環境の個別レビューです。どこから手を付けるべきかはデスク以外の在宅環境|見落としがちな投資先で整理しています。

