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賃貸のマンションでサウンドバーを買うのは、贅沢というより実務です。うちが買った理由は音を良くしたかったからではなく、音量を上げたくなかったから。目的が逆なんです。
子どもを寝かしつけたあとの21時以降、テレビの音量を上げられません。ところが薄型テレビの内蔵スピーカーは、小さい音量にするとセリフから先に聞こえなくなる。字幕を出せば解決しますが、日本語のドラマに日本語字幕を出しながら見るのは、なんとも味気ない。この問題を解決するために2万円台を払った話です。
テレビの音が聞き取りにくい理由は、スピーカーの向き
いまの薄型テレビは、スピーカーが背面か下面に付いています。パネルを薄くするために、前面に置く場所がないからです。だから音は一度、壁か床に当たってから耳に届く。
この反射のあいだに、高い周波数の成分が減衰します。人の声の輪郭を作っているのは中高音域なので、そこが削られるとセリフだけが不明瞭になる。効果音や音楽は低音が主体なので、影響が小さい。結果として、音量を上げると効果音だけがうるさくなって、セリフはあまり改善しないという体験になります。
うちの43型テレビでも、まったく同じことが起きていました。音量18で映画の爆発音がドンと来て、音量18で俳優のつぶやきが聞こえない。この2つが同じ設定で同居しているのが根本的な問題です。
選んだのは横幅60センチのシンプルなモデル
サウンドバーには、単体のものと、別体のサブウーファーが付くセットがあります。私は最初、サブウーファー付きを検討していました。低音が出たほうが映画は迫力が出る。
やめた理由は2つで、まず置き場所です。サブウーファーは30センチ角ほどの箱で、床に置くことになる。うちのリビングにその余地はないし、床にあれば子どもが確実に触ります。もうひとつが、そもそも低音を出すつもりがなかったからです。
買ったのはBoseのTV Speakerで、横幅が59.4センチ、高さ5.6センチ、奥行き10.2センチ、重さ2キロ。単体で完結するタイプです。43型テレビの幅が96センチほどなので、その下に置くと左右に18センチずつ余ります。
不満は、入力端子が少ないことです。HDMIのARCが1つと光デジタルが1つ。ゲーム機やレコーダーを直接つなぐことはできないので、すべてテレビ側に集約する必要があります。うちはテレビにHDMIが3つあるので足りていますが、機器が多い家だと不便だと思います。
もう少し予算を出せるなら、DENONのDHT-S218のような2万円台後半のモデルがあります。楽天で26,375円ほど。こちらはサブウーファーを内蔵していて、立体音響にも対応しています。低音が出るぶん、集合住宅では設定を絞る前提になりますが。
セリフを聞き取りやすくするモードは、本当に効く
多くのサウンドバーに、対話やニュース向けの音声強調モードが付いています。名前はメーカーごとに違いますが、やっていることは中高音域を持ち上げて、低音を抑えること。
正直、買う前は疑っていました。イコライザーをいじっただけだろう、と。実際そのとおりなんですが、効果ははっきり出ます。うちの体感で言うと、テレビの音量を12から8に落としても、セリフの聞き取りやすさは以前の12より上でした。
数字で書くと分かりにくいので場面で言うと、寝室の引き戸を閉めた状態で、子どもが起きなくなりました。以前は週に2回は泣き声で中断していたのが、いまは月に1回あるかどうか。この差が、私にとっての費用対効果です。
ただし、万能ではありません。もともと録音の悪い古い映画や、環境音が大きい海外ドラマでは、モードを入れても厳しい場面があります。それと、音楽を聴くときにこのモードを入れっぱなしにすると、痩せた音になります。切り替えを忘れて、しばらく「なんか音が薄いな」と思っていました。
低音は、階下に響くので絞っている
集合住宅で気にすべきは、空気を伝わる音より、床や壁を伝わる振動です。低音は波長が長いので、建物の構造体を通って階下に届きます。
うちのサウンドバーはテレビ台の天板に直置きしていました。ある日、下の階の人とエレベーターで会って世間話をしたとき、特に苦情はなかったんですが、念のため設置を見直しています。天板とサウンドバーのあいだに、5ミリ厚のゴム製のマットを敷きました。ホームセンターで数百円のもの。
これで振動がどれだけ減ったかを測る手段はありませんが、テレビ台に手を当てたときの震えは明らかに減りました。低音の設定も、初期値から2段階下げています。映画の迫力は落ちますが、階下に気を使いながら見るストレスのほうが大きい。
結局のところ、賃貸で求めるべきは音の大きさではなく、小さい音での明瞭さです。この割り切りができてから、機種選びの基準がはっきりしました。低音の量をうたう製品は、うちの用途では加点になりません。
接続は、HDMIのARCが使えるかを先に確認する
設置で迷ったのが接続方式でした。HDMIのARCという規格に対応していれば、ケーブル1本でテレビとつながり、テレビのリモコンで音量が操作できます。
これが地味に重要で、リモコンが2つになると使わなくなります。うちは妻もテレビを見るので、操作が増えるのは避けたかった。テレビ側のHDMI端子のうち、ARC対応と書かれているのは1つだけなので、そこに挿す必要があります。私は最初、別の端子に挿して音が出ず、10分ほど悩みました。
光デジタルケーブルでもつながりますが、その場合はテレビのリモコンで音量が変えられないことがあります。古いテレビで使い回すつもりなら、この点は買う前に確認したほうがいい。
設置の高さも、あとから調整しました。テレビ台の天板に置くと、サウンドバーがテレビのリモコン受光部を隠すことがあります。うちは5.6センチの高さでぎりぎりかからなかったので助かりましたが、背の高いモデルだと、テレビを底上げするか壁掛けにする必要が出ます。
使うのは夜だけ、それでいいと思っている
昼間はテレビをほとんどつけません。私は在宅で仕事をしているし、子どもの前でテレビを流しっぱなしにはしない方針です。だから、この機械が働くのは21時から23時のあいだだけ。
1日2時間、週に5日として、年間で500時間ほど。2万円台の機械としては、まあ元は取れている感覚です。何より、夫婦でドラマを1本見終えるという行為が、また成立するようになりました。
ひとつ、想定外の使い道もありました。Bluetoothでスマホから音楽を飛ばせるので、昼間に子どもと遊ぶときの音楽をこれで流しています。スマホのスピーカーより格段に聞きやすくて、童謡を流しながら離乳食を食べさせる時間が少し明るくなりました。買うときにはまったく考えていなかった用途です。
買って半年で気づいたのは、これがオーディオ製品というより、生活音の管理ツールだということです。音を大きくするために買ったのではなく、大きくしないために買った。賃貸で子どもがいる家のサウンドバーは、そういう役割になると思っています。
この記事は家電の個別レビューです。買い替えの優先順位は家族が増えて買い替えた家電|一人暮らし仕様からの卒業にまとめています。

