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「すみません、もう一度いいですか」。この一言を、半年で何十回言われたか分かりません。ノートPCの内蔵マイクで会議に出ていたころの話です。ネットワークのせいだと思っていました。回線を有線に変え、ルーターも買い替え、それでも聞き返しは減りませんでした。
原因はマイクでした。5,000円台のUSBマイクを1台足しただけで、聞き返される回数がほぼゼロになった。設備投資として、これほど費用対効果がはっきりしたものは久しぶりです。何を選び、何を失敗したかを書きます。
内蔵マイクが拾っていたのは、私の声だけじゃなかった
ノートPCの内蔵マイクは、キーボードの上あたりに小さな穴として開いています。この位置がまず問題で、口からの距離が50cmから60cmくらい。声は距離の二乗に比例して弱くなるので、口元から5cmの距離で拾うヘッドセットとは、届く音圧がまるで違います。
その弱い声を無理に増幅するので、同時に他の音も持ち上がります。私の環境で実際に相手から指摘された音は3つありました。ひとつはキーボードの打鍵音。会議中にメモを取ると、内蔵マイクは筐体を伝わる打鍵の振動をそのまま拾います。ふたつめはエアコン。夏場、風量を上げると「ゴー」という音がずっと乗る。みっつめが部屋の反響です。うちの仕事部屋は6畳のフローリングで、カーテン以外に吸音するものがない。声が壁で跳ね返ってからマイクに入るので、風呂場でしゃべっているような響きになります。
相手には、遠くて、こもっていて、ノイズが乗った声として届いていたわけです。聞き返されて当然でした。
最初に大きいコンデンサーマイクを買って、持て余した
マイクを買おうと決めたとき、最初に手を出したのが配信でよく見る大きなコンデンサーマイクでした。アームスタンド込みで1万2,000円ほど。音質のレビューは軒並み高評価で、これを買えば解決すると思ったんです。
音は確かに良くなりました。良くなりすぎて困りました。感度が高いので、部屋の中の音を丁寧に拾います。ベランダの外を走る車、リビングのテレビ、そして子どもの泣き声。生後6ヶ月なので日中に泣くのは当たり前で、そのたびに会議の全員に届きます。
物理的な邪魔さも想定外でした。アームで口元に近づけると、マイク本体が27インチのモニターの左下1/4を隠します。会議中に資料を映しながら手元のコードを見たいのに、視界にマイクがいる。1週間で使うのをやめて、今は押し入れの箱の中です。返品期限を過ぎていたので、1万2,000円は丸ごと勉強代になりました。
単一指向性という言葉を、遅れて理解した
失敗のあとで調べて、指向性という概念をようやく理解しました。マイクがどの方向の音を拾うかの特性です。
全指向性は360度すべての方向から同じように拾います。会議室に何人も座って囲むような使い方に向いていて、逆に言えば部屋のノイズも均等に拾う。単一指向性は正面の音を強く拾い、背面や側面の音を落とします。私が買ったコンデンサーマイクも実は単一指向性でしたが、感度が高すぎて正面以外もよく聞こえていました。
在宅で一人で使うなら、正面だけ拾えば十分です。背面にエアコンがあり、側面のドアの向こうにリビングがある。この構図なら、拾う範囲を絞れば絞るほど相手に届く音はきれいになります。据え置きのUSBマイクを買うなら、まず単一指向性かどうかを仕様表で確認する。これが一番効く選び方だと思います。
結局スピーカーフォン型に落ち着いた理由
それでも私が最終的に選んだのは、単一指向性の据え置きマイクではなくスピーカーフォン型でした。使っているのはオーディオテクニカのAT-CSP1で、価格は1万円弱。手のひらに載る円盤型で、USBケーブル1本でPCにつなぐだけの製品です。
スピーカーフォンは360度集音、つまり全指向性です。指向性の理屈からすると不利なはずなのですが、この手の製品はエコーキャンセラーとノイズ抑制の処理を本体側で持っていて、拾ったあとに削る設計になっています。実際、エアコンの送風音は相手にほとんど届かなくなりました。方向で削るか、演算で削るかの違いです。
選んだ決め手は3つ。デスクの上を占有する面積が直径10cm程度で済むこと、スピーカーも兼ねているのでヘッドホンなしで会議に出られること、そしてミュートボタンが物理で本体にあることです。3つめは地味に効きます。子どもが泣き出した瞬間に手を伸ばして押せる。会議アプリの画面上のミュートボタンを探すより1秒速い。
もう少し安く済ませたいなら、EMEETのM0Plusのようなスピーカーフォンが6,999円くらいから選べます。私が試した範囲では、この価格帯でも内蔵マイクとは比較にならないくらいまともになります。
据え置きマイク型とどう使い分けるか
どちらを買うべきかは、部屋にほかの人がいるかどうかで分かれると考えています。
スピーカーフォンが向くのは、机の上に何かを置きたくない人、会議のたびにヘッドホンをかぶるのが煩わしい人、そして時々、同じ部屋にもう一人加わることがある人です。私の場合は妻が子どもを抱いたまま部屋に来て、保育園の説明を一緒に聞く場面が実際にありました。全指向性なので、2人が並んで話しても両方拾えます。
据え置きの単一指向性マイクが向くのは、音質を優先したい人です。録画してあとから配布する社内勉強会や、ポッドキャストのようなコンテンツを作るなら、こちらのほうが素直な音になります。サンワサプライのMM-MCU06BKNのように、5,000円前後で単一指向性のUSBマイクは選べます。ただしスピーカーは別に必要で、そうなるとヘッドホンかスピーカーを併用する構成になります。
私は会議が主で録音はしないので、スピーカーフォンで正解でした。逆に、社内向けの技術共有を録画する仕事が増えたら、据え置き型を買い足すと思います。
不満な点
いいことばかりではないので、使っていて引っかかる点を書きます。
まず置き場所です。円盤型とはいえ、キーボードの手前か奥に常時置く場所が要ります。私はモニターの足元、キーボードの奥に置いていますが、ここは本来ノートを広げたい場所でした。据え置きマイクよりは小さいものの、机がゼロになるわけではありません。
次にUSBポートを1つ使うこと。MacBookのポートは限られているので、マイク、外部モニター、電源で埋まります。ハブを経由させると今度は電源まわりの取り回しが複雑になるので、私はハブの手前でマイクだけ本体に直挿しする運用にしました。
それから、スピーカー機能としての音質は期待できません。会議の声を聞くには十分ですが、音楽を鳴らすと低音がほぼ出ません。人の声の帯域に振ったチューニングなので、これは仕様として割り切るところです。
最後に、有線であることの制約。Bluetooth接続に対応した製品もありますが、私が買ったのはUSB有線のみです。ケーブルが1本机の上を走ります。安定性を取ったので後悔はしていませんが、机の上をすっきりさせたい人には気になるはずです。
導入して何が変わったか
導入から3ヶ月、聞き返された記憶がありません。以前は週に3、4回はあったので、その分だけ会議が短くなりました。1回の聞き返しで失う時間は10秒程度でも、言い直すたびに話の流れが途切れるほうがきつかった。
マイクは自分では効果を確認しづらい機材です。自分の耳には届かないので、良くなったかどうかは相手の反応でしか分からない。だからこそ後回しにしていたのですが、1万円で会議の質が変わるなら、モニターやキーボードより先に手をつけてよかった買い物でした。
この記事は開発環境の個別レビューです。モニター選びの判断基準そのものは開発用モニターの選び方|4K・WQHD・ウルトラワイドをコードを書く視点でで整理しています。

