静音マウス|クリック音が消えると集中が変わる

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生後5ヶ月の子どもがリビングで昼寝をしている、その1mほど横で私はコードを書いています。キーボードは静音のものに替えていたので、そこは問題なかった。誤算だったのはマウスのクリック音でした。「カチッ」という音は短くて高い。生活音に埋もれてくれない音なんですよね。ブラウザのタブを切り替えただけで、子どもが「んっ」と身じろぎする。その瞬間に息を止める。この状態が2週間ほど続いて、2,000円ちょっとの静音マウスを買いました。結果として、静かになったこと以上に予想外の変化がありました。

クリック1回で昼寝が終わる、という緊張感

子どもが生まれるまで、マウスの音を意識したことは一度もありませんでした。むしろカチカチという手応えは、操作が確定した合図として気持ちのいいものだと思っていた。

状況が変わったのは、子どもがリビングで昼寝をするようになってからです。うちは2LDKで、日中は妻と子がリビングにいる。私のデスクもリビングの隅にある。昼寝の時間は1〜2時間で、この間に集中して作業を進めたい。ところがクリックのたびに手が止まる。音を出さないように、指を離すときにボタンをそっと戻す、みたいな不自然な操作をしていました。

妻に「そんなに気を使わなくても起きないよ」と言われたんですが、一度起きてしまった経験があると身構えるんですよね。実際、寝入りばなの浅い時間帯は音に反応することが何度かありました。

静音スイッチは、感触を残して音だけ消す

そもそもマウスの「カチッ」はどこから出ているのか。あれはボタンの下にあるマイクロスイッチの中で、金属の板バネが座屈して弾ける音です。指の力で板が反り返り、限界を越えた瞬間にパチンと反転する。この反転が接点の切り替えとクリック感と音を同時に生んでいる。だから音だけを消すのが難しい。

静音スイッチが何をしているかというと、この弾ける動きにダンパーを入れて、金属同士がぶつかる衝撃を吸収しています。板バネの反転そのものは残るので、指には「カクッ」という節度感が伝わるのに、耳に届く音だけがほとんど消える。この仕組みを知ったとき、素直によくできていると思いました。

実際に押してみると、音の質は「カチッ」から「コスッ」に変わります。無音ではないけれど、音の高い成分が抜けているので、部屋の中で目立たない。1m先で寝ている子どもは、少なくともクリック音では起きなくなりました。

買ったのはバッファローの5ボタンワイヤレス

選んだのはバッファローのBSMBW325BKという静音ワイヤレスマウスです。実売は2,000円前後。USBレシーバーを挿すタイプの2.4GHz接続で、5ボタン、BlueLEDセンサー、DPIの切り替えが本体上部のボタンでできます。

UGREEN 人間工学 ワイヤレスマウス 6ボタン コスパ最高マウス 無線2.4GHz 静音マウス5段階DPI切替 4000DPI ノートP

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選定の条件はシンプルで、左右のクリックが静音であること、進む・戻るのサイドボタンがあること、そして安いこと。メインのポインティングデバイスはデスクでトラックボールを使っているので、これはダイニングテーブルやソファに移動して作業するとき用という位置づけでした。だから高いものを買う理由がなかった。

不満もあります。BlueLEDセンサーは光沢のあるテーブルでも動くのが売りなんですが、うちのダイニングテーブルの表面ではたまにカーソルが飛びます。あと本体が軽い。乾電池1本で動くぶん軽量なんですが、この軽さが後述する操作感の物足りなさにつながっています。

音が消えたら、自分の集中のほうが変わった

ここが一番書きたかった部分です。

静音マウスを導入した目的は、子どもを起こさないことでした。それは達成された。予想していなかったのは、自分自身の集中の質が変わったことです。

普通のマウスを使っていた頃、私は自分のクリック音を無意識に聞いていました。作業中に「カチッカチッカチッ」と連続すると、それは自分が焦っている合図になる。ブラウザのタブを行ったり来たりして、Slackを開いて、また戻って。その音のリズムが、そのまま自分の落ち着かなさとして耳に返ってきていたわけです。

静音マウスにしてからは、この自分の落ち着きのなさが可聴化されなくなった。結果として、作業中の部屋がかなり静かになりました。キーボードを打つ音以外、ほとんど何も鳴っていない。この状態がしばらく続くと、思考が途切れにくくなるのが分かります。

科学的な根拠がある話ではないし、単に静かな環境が好きなだけかもしれません。ただ、導入から3ヶ月経った今でも、たまに古いマウスを使うと「うるさいな」と感じる。音に慣れていたのではなく、音に削られていたんだと思っています。

短所は3つ。クリック感の物足りなさが一番大きい

正直に書きます。

ひとつめはクリック感が薄いこと。ダンパーが衝撃を吸収するので、指に返ってくる情報が減ります。押したことは分かるけれど、「入った」という確信は普通のスイッチより弱い。特に困るのがダブルクリックで、1回目がちゃんと入ったか一瞬迷う場面が最初の1週間はありました。今は慣れましたが、快感という点では確実に落ちています。

ふたつめはゲームに向かないこと。私はほとんどゲームをしないので実害はないんですが、試しにFPSを少しやってみたら明確に不利でした。クリックの確定タイミングが指で分かりにくいので、連射や素早い切り替えの精度が落ちる。ゲーミングマウスに静音スイッチの製品がほとんどないのは理にかなっています。

みっつめは寿命。静音スイッチはダンパーというゴム系の部品に依存しているので、経年で劣化する製品があります。私が買う前に調べたレビューでも「半年で音が戻ってきた」という書き込みをいくつか見ました。手元の個体は3ヶ月で変化を感じていませんが、金属だけで動く普通のスイッチより変数が多いのは構造上の事実です。安いものを消耗品として使い、劣化したら買い替える。そういう割り切りで選ぶのが現実的だと考えています。

ワイヤレスの遅延は、開発用途では気にならない

静音マウスを検討していたとき、有線か無線かで少し悩みました。無線は遅延があるという話をよく見かけるので。

3ヶ月使った結論として、コードを書く用途では体感できる遅延はありません。2.4GHzのUSBレシーバー接続で、カーソルがカクつく、クリックが遅れて反映される、といったことは起きていない。エディタでカーソルを置く、ボタンを押す、タブを切り替える。この程度の操作で無線の遅延を感じ取るのは無理だと思います。

むしろ実用上の差が出るのは接続の安定性のほうで、これはBluetoothよりレシーバー方式のほうが確実でした。スリープからの復帰でBluetoothマウスが数秒つながらないことがありますが、レシーバーだとそれがない。ただしUSBポートを1つ占有するので、MacBookのようにポートが少ない機種だとハブが必要になります。

電池は単三1本。3ヶ月使って交換していませんが、電池込みで持つと本体が少し重心が偏るのは感じます。

サイズと持ち方の相性は、静音性より先に確認したほうがいい

最後に、これは静音マウス全般に言えることを書いておきます。

マウスの持ち方は大きく2つあります。手のひら全体を乗せるかぶせ持ちと、指先だけで支えるつまみ持ち。前者は手首と前腕で動かすので疲れにくく、後者は指先で細かく動かせるので精度が出る。

問題は、静音マウスとの相性が持ち方で変わることです。つまみ持ちの人は指先の感覚を頼りに操作しているので、クリック感が薄いことのデメリットを強く受けます。私はかぶせ持ちなので、手のひら全体で押している感覚があり、指先の情報が減っても違和感が小さかった。同じ製品でも評価が割れるのは、たぶんここが原因のひとつです。

買ったBSMBW325BKは、全長10cm弱の中型でやや平べったい形状。かぶせ持ちで手のひらがちょうど収まりました。ただ、手が大きい人だと支えきれずに指先で持つ格好になりそうで、そうなると評価は変わってくると思います。

静音マウスを選ぶとき、多くの人はまず「どれくらい静かか」を調べます。でも実際に毎日触って気になるのは、手に合うかどうかと、クリック感が許容できるかどうかのほう。静かさはスペック表で分かるけれど、そっちは触らないと分からない。2,000円のマウスにこう言うのも変ですが、可能なら店頭で一度押してみることをおすすめします。

この記事は開発環境の個別レビューです。モニター選びの判断基準そのものは開発用モニターの選び方|4K・WQHD・ウルトラワイドをコードを書く視点でで整理しています。

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