静音キーボード 比較|家族が寝ている横で打つために

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深夜1時、リビングでコードを書いていたら、寝室のドアが開いて妻が出てきました。「うるさくて眠れない」。当時使っていたのは青軸のメカニカルキーボードで、自分では気持ちよく打っていたつもりでした。うちは2LDKの賃貸マンションで、リビングと寝室は壁1枚。生後6ヶ月の子どもも同じ部屋で寝ています。キーボードの打鍵音は、性能の話ではなく家庭内の問題になる。それから半年かけて4種類のキーボードを買ったり借りたりして音を比べた記録です。

青軸を選んだ半年前の自分は、家族のことを考えていなかった

最初に買ったメカニカルは青軸でした。カチッというクリック感が気持ちよくて、打っていて楽しい。在宅勤務で一人の時間が長かった頃は、これで何も問題がなかったんですよね。

状況が変わったのは子どもが生まれてからです。日中は妻と子がリビングにいる。夜は寝室のすぐ隣で作業する。青軸の「カチッ」は高い周波数の成分が強くて、壁1枚を通り抜けてくる音です。妻に指摘されて初めて、自分が半年間なにをしていたか分かりました。

それで静音キーボード探しが始まったんですが、Amazonで「静音」と検索して出てくるものを片端から見ても、判断がつかない。どれも「静音設計」と書いてある。何がどう静かなのかが書いていない。だから自分で分解して考えることにしました。

キーボードの音は3つに分けて考えると整理できる

キーを1回押したときに出る音は、実は単一の音ではありません。3つの音が重なっています。

ひとつめが接点音。青軸や茶軸のように、入力が確定するときにカチッと鳴らす機構を持つスイッチが出す音です。これは意図的に作られている音なので、赤軸やリニア系のスイッチにはそもそも存在しません。

ふたつめが底打ち音。キーを最後まで押し込んで、スイッチの底やキーボードのプレートに当たる音です。「コトッ」「カツッ」と鳴るのはここ。そして重要なのは、これが打ち手が出している音だということ。

みっつめが戻り音。指を離してキーがバネで戻り、上限に当たる音です。底打ちより軽いですが、高速で打つと連続して鳴るので意外と目立つ。

「静音キーボード」と名乗る製品の多くは、1つめの接点音をなくし、2つめと3つめの当たる部分にシリコンやゴムのダンパーを入れています。逆に言えば、この設計は打ち手の力加減までは制御できない。ここが後で効いてきます。

方式ごとに、音の質と大きさを並べてみる

実際に手元で比べた5つの方式について、音の質を書きます。数値の測定機を持っていないので、あくまで自分の耳での比較です。

青軸・茶軸:家族がいる部屋では選択肢に入らない

青軸は接点音がはっきり鳴るので、静けさの話をするなら最初に外れます。茶軸は青軸ほどではないものの、押した瞬間に軽い引っかかりの音がある。この2つは、深夜の隣室に届くという意味で同じグループです。

赤軸:接点音はないが、底打ち音は普通に鳴る

赤軸はリニアなので接点音がありません。ここで「赤軸=静か」と誤解しがちなんですが、実際に打つと「コトコト」という低めの音がしっかり出ます。どこで入力が確定したか指では分からないので、どうしても底まで打つ。結果、底打ち音が主役になる。青軸より確実に静かですが、無音とはほど遠い。

静音赤軸:底打ちにダンパーが入り、音の輪郭が丸くなる

静音赤軸は赤軸の構造にシリコンのダンパーを追加したもので、底と上限に当たる衝撃を吸収します。音は「コトコト」から「トスッ」に変わる感じ。音量そのものより、音の輪郭がぼやけるのが特徴で、これが壁を越えにくい音質に効いています。

パンタグラフ:小さいが、音が高い

ノートPCの内蔵キーボードや薄型の外付けがこれ。ストロークが1〜2mmしかないので音量は小さいんですが、音が高くて短い。「カチャカチャ」という感じで、静かな部屋だと意外と耳につきます。それと、安い製品は打鍵時に本体全体がたわんで別の音を出すことがある。

メンブレン・静電容量無接点

メンブレンは押した感触がぐにゃっとしているぶん音は控えめですが、キーがぐらつく音や本体の共振が乗ることがあって、静かさは製品差が大きい。静電容量無接点は底まで押さなくても入力できる方式で、打ち方さえ身につけば最も静かな部類に入りますが、価格が3万円を超えるので比較の土俵が違います。

「静音」と書いてあっても、底打ちの音は消えない

ここが一番書いておきたいところです。

静音赤軸に替えた初日、私は正直がっかりしました。思ったより音が出る。レビューには「驚くほど静か」と書かれていたのに、自分が打つと「トスッ、トスッ」とはっきり聞こえる。

原因は自分でした。青軸を1年半ほど使っている間に、底まで叩き込む打ち方が体に染みついていたんですよね。青軸は接点音を鳴らすのが快感なので、自然と力が入る。その打ち方のまま静音スイッチを使っても、ダンパーの吸収量を超える力で叩いていれば当然音は出る。

意識して力を抜く練習を2週間ほどしました。具体的には、指を沈めるというよりキーの上に指の重さを乗せる感覚。これで音量ははっきり下がりました。静音キーボードは半分が製品の話で、もう半分は打ち方の話です。この点を書いているレビューをほとんど見かけなかったので、あえて強調しておきます。

特に音が残るのがスペースキーとEnterキー。親指と小指は力の加減が効きにくくて、ここだけ音量が一段大きい。私は今でもEnterを強く叩く癖が抜けていません。

深夜に打って、寝室でどう聞こえるか試した

実際の検証です。妻に協力してもらって、寝室のベッドに横になった状態で、リビングのキーボードを打つ音がどう聞こえるか報告してもらいました。距離はドア越しに約4m、扉は閉めた状態。時刻は23時半すぎ、エアコンは弱運転。

青軸のときは「はっきり聞こえる。何を打っているかリズムまで分かる」。これは以前から言われていたとおりです。

赤軸に替えると「音があるのは分かるけど、気にすれば聞こえる程度」。眠れないほどではない、という評価でした。

静音赤軸で、力を抜いて打った状態だと「言われないと気づかない」。これが一番効いた。ただし条件があって、私が集中して速く打ち始めると「あ、今打ってるな、って分かる」とのことでした。つまり打鍵の速度が上がると力も上がって、音が戻ってくる。

ちなみに冷蔵庫のコンプレッサーが回る音のほうが大きい、というのが妻の総評です。生活音に埋もれるレベルまで来れば実用上は十分。

落としどころは、スイッチを後から替えられるフルサイズだった

この半年でいちばん長く使い、今も家族の生活時間帯に合わせて使っているのが、iKBCのCD108シリーズです。JIS配列112キーのフルサイズで、価格は16,580円。GATERONの赤軸を選んで組んでもらう形で買いました。私は最終的に3万円台の静電容量無接点にも手を出しましたが、静かさの改善幅を価格で割ると、費用対効果が高かったのはこちらです。

iKBC CD108シリーズ JIS配列 112キー キーボード フルサイズ メカニカルキーボード ホットスワップ 対応 IK-CD108シ

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選んだ理由は3つあります。ホットスワップに対応していること。はんだ付けなしでスイッチを1個ずつ抜き差しできるので、音が気になるキーだけ静音タイプに載せ替えられます。私はスペースキーとEnterまわりを先に替えました。2つめがJIS配列で、記号の位置が仕事のキーバインドとそのまま合うこと。3つめが有線であること。無線のほうが取り回しはいいんですが、接続が切れる可能性を仕事道具に持ち込みたくなかった。

不満もあります。まずフルサイズなので幅が44cmほどあって、マウスが体から遠くなる。テンキーを使うのは経費精算のときくらいなので、右肩が疲れるコストのほうが上回る日もあります。次に、PBTのキーキャップと重い本体のぶん、デスクの天板に直置きすると打鍵の振動が響く。これは薄いデスクマットを敷いて解決しました。あとホットスワップは便利ですが、静音スイッチを別に買えばその分の出費が乗ります。本体16,580円で終わらない前提で見ておいたほうがいいです。

静かさと打鍵感は、はっきりトレードオフになる

半年やってみて一番実感しているのがこれです。静かなキーボードは、押した感触が薄い

静音赤軸のダンパーは衝撃を吸収するので、指に返ってくる情報が減ります。押した手応えがぼんやりして、青軸のような「入った」という確信がない。慣れの問題ではあるんですが、打鍵の楽しさという点では確実に下がりました。青軸を打っていたときの、あのリズムに乗る感じは静音スイッチでは味わえません。

それでも戻さないのは、優先順位が変わったからです。子どもが寝ている横で仕事ができることのほうが、打鍵の快感より価値が高い。ただ、一人暮らしで隣室に誰もいない人が同じ選択をする理由はないと思います。静音キーボードは環境が要求するから選ぶもので、性能が上のものではない。

もうひとつ、実利がはっきりあるのがWeb会議です。青軸の頃は、会議中にメモを取ると相手のマイクが反応して発言者表示が自分に切り替わることがありました。「タイピングの音、入ってますか」と何度か聞いた記憶があります。静音赤軸にしてからは一度もない。MacBookの内蔵マイクでも、会議ツールのノイズ抑制が効いていれば実質拾いません。この改善は妻の睡眠とは別に、仕事上の地味な収穫でした。

この記事は開発環境の個別レビューです。モニター選びの判断基準そのものは開発用モニターの選び方|4K・WQHD・ウルトラワイドをコードを書く視点でで整理しています。

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