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20000mAhのモバイルバッテリーで、スマホは何回充電できるのか。パッケージには「iPhone約5回充電」と書いてある。でも実際に手元で測ってみたら、4回目の途中で力尽きました。誇大広告というわけではなくて、mAhという単位の性質上どうしてもそうなる、という話です。
防災リュックに入れるバッテリーを選び直したとき、私はこの「公称値と実効値のズレ」で一度つまずきました。もうひとつ、半年ぶりに取り出したバッテリーの残量が減っていて青ざめた失敗もしています。mAhの数字を実際の充電回数に翻訳するところから、順番に書いていきます。
20000mAhがスマホ4回にしかならない理由
まず単位の話から。モバイルバッテリーに書かれている20000mAhは、内蔵しているリチウムイオンセルの容量です。そのセルの電圧はだいたい3.6〜3.7V。つまり実際のエネルギー量は、
20000mAh × 3.7V = 74Wh
これが本当の容量です。ところがスマホに給電するときは、USBの規格に合わせて5Vまで昇圧しないといけない。その回路で熱としてエネルギーが逃げます。急速充電で9Vや12Vを出すときはさらに変換が入る。加えてケーブルの抵抗、スマホ側の充電回路のロスもある。
この一連のロスを合計すると、実際に取り出せるのは公称値の60〜70%あたりに落ち着くことが多いとされています。74Whの60〜70%なら、44〜52Wh。
一方でスマホ側。iPhoneの15や16の世代でバッテリーは3,300〜3,600mAh前後、Wh換算で13〜14Whくらいです。Androidの大画面機でも15〜20Wh。仮に50Wh取り出せて、スマホが13Whだとすると、
50Wh ÷ 13Wh ≒ 3.8回
4回に届かない。私が実測で4回目の途中で止まったのは、計算どおりでした。「約5回」という表記は、ロスをかなり楽観的に見積もった上限値だと思っておくと、期待値がズレません。10000mAhなら実質2回。防災用途で2回はさすがに心もとなくて、私が20000mAh級を選んだのはこの一点です。
停電の1日で、スマホはいつもより早く減る
普段の私のiPhoneは、朝100%で夜に30%くらい。1日1回の充電で足りています。でもこれは在宅勤務でWi-Fiにつなぎっぱなしの、平常時の話です。
停電になると条件が全部ひっくり返ります。まずWi-Fiが落ちてモバイル回線に切り替わる。電波が不安定だと、スマホは基地局を探し続けて電力を食います。次に、情報収集で画面を点けている時間が一気に伸びる。自治体のXアカウント、停電情報のマップ、家族とのやりとり。屋外や暗い場所では輝度も上げがちです。さらに誰かの通信手段が死んでいればテザリングを頼まれる。これが相当バッテリーを削る。
台風で半日ほど停電したとき、私のスマホは午後だけで50%以上減りました。感覚としては平常時の1.5〜2倍のペースです。
この前提で計算し直すと、停電1日あたりスマホ1台が消費するのは1.5回分くらい。大人2人で3回分、3日なら9回分です。20000mAhが4回だとすると、1個ではまったく足りない。節電モードでかなり伸ばせますが、「1個持っていれば安心」ではないことは押さえておきたいところです。我が家は20000mAhと、普段カバンに入れている10000mAhの2個体制にしています。
半年ぶりに取り出したら、残量が減っていた
これが一番やらかした話です。
2年ほど前に買った10000mAhを満充電にして防災リュックに入れ、それきり触らなかった。半年後の点検日に取り出したら、インジケーターのランプが1つしか点いていません。だいたい25%前後。実質2,500mAh、スマホ1回充電できるかどうかです。
リチウムイオンバッテリーは使わなくても自然に放電します。加えて本体が待機電力を食っている。一般的には月に数%程度と言われますが、製品や保管温度でかなり幅がある。玄関の収納という夏場それなりに暑くなる場所に置いていたのも、良くなかったはずです。
それ以来、3ヶ月に1回の充電をルールにしました。カレンダーに繰り返し予定を入れて、非常食の賞味期限チェックとまとめてやると忘れにくい。
保管の話も少しだけ。満充電のまま長期保管するとセルの劣化が早いとされ、80%前後が望ましいとよく言われます。ただ防災用に80%で置くのは本末転倒な気もするので、私は満充電で置いて3〜4年で買い替える割り切りにしました。古い方は背面がわずかに膨らんでいて、そのタイミングで処分しています。
充電したいものを数えたら、スマホだけではなかった
防災リュックを詰めながら、USBで充電するものを家じゅうから数えてみました。これが意外に多い。私と妻のスマホが2台。ワイヤレスイヤホン(ケース込みで充電が必要)。子どものベビーモニター。USB充電式のLEDランタン。モバイルWi-Fiルーター。実家に合流する想定なら親のスマホも増える。
ベビーモニターは地味に重要でした。生後6ヶ月の子が寝ている部屋を別室から見るのに使っていて、停電中は特に、暗い部屋の様子が分かるだけで気持ちが違う。ただし常時通信するので減りが早く、丸1日使うと1回は充電が要ります。
スマホ以外を足すと、必要な回数はさらに増える。私の見積もりでは、大人2人+子ども1人の世帯で3日分を乗り切るなら、20000mAh+10000mAhの組み合わせが現実的なラインです。1個で足りるのは、節電を徹底して1〜2日を凌ぐ場合。
実際に防災リュックに入れたバッテリーと、選んだ条件
買い替えで選んだのは、20000mAhの薄型タイプ。決め手はいくつかあります。ひとつは厚みが16mmという点。20000mAh級は分厚いレンガのような形状が多く、リュックの中でかなり場所を取ります。薄いだけで書類やタオルの隙間に差し込める。容量は有限なので、これは想像以上に効きました。
もうひとつがType-Cの入出力兼用。避難所でコンセントを借りられたとき、ケーブルが1本で済むのは大きい。microUSB入力の古い規格だと、そのためだけに別のケーブルを持ち歩くことになります。3台同時充電に対応しているのも、家族で使う前提だと現実的。ただし同時に挿すと1台あたりの出力は落ちるので、急ぐときは1台ずつです。
それと、PSE認証済みであること。モバイルバッテリーは2019年から電気用品安全法の規制対象になっていて、PSEマークのない製品は国内で正規に販売できません。防災用に長期保管するものだからこそ、ここは外せない条件でした。
不満もあります。まずLEDライトが付いていないこと。防災グッズとしては「ライト付き」を推す記事も多いので、兼用を期待して買うと肩透かしになります(私はこれを短所とは思っていません。理由は後述)。
あとは充電時間。20000mAhを空から満充電にするには、それなりのアダプタでも5時間前後かかります。寝る前に挿して朝、というペース。重さも、薄いとはいえ20000mAh級である以上350〜400g前後にはなります。毎日カバンに入れるサイズ感ではなく、リュックに常駐させるものだと考えています。
パススルー充電とLEDライトについて
細かい選定条件を2つだけ。
パススルー充電は、バッテリー本体を充電しながら同時にスマホにも給電できる機能です。避難所でコンセントが1口しかない場面では便利。ただし対応をうたっていない製品でやると、発熱や本体の劣化につながることがあります。仕様に明記されていない限りは使わないのが無難。私は必須条件にはしませんでした。停電中はそもそもコンセントが使えないので、出番はそこまで多くないという判断です。
LEDライト付きモデルについては、正直あまり勧めません。あの手のライトは数ルーメン程度で、手元を照らす以上のことはできない。それでいてバッテリーは食う。停電の夜に部屋を照らしたいなら、LEDランタンかヘッドライトを別に用意した方が確実です。役割を分けた方が、どちらも中途半端になりません。
ポータブル電源は「置く」、モバイルバッテリーは「持ち出す」
ポータブル電源と迷っている人もいると思います。私も一度比較しました。数字で見ると差は歴然です。今回のモバイルバッテリーが74Wh。エントリークラスのポータブル電源で500Wh前後、上位機種なら1,000Whを超えます。冷蔵庫や電気毛布を動かせるのはポータブル電源だけ。ただし重さも桁違いで、500Whクラスで5〜6kg、1,000Whなら10kg超えが普通です。子どもを抱えて水と食料も持って、そこに10kgを足すのは現実的ではありません。
だから私は、こう整理しました。ポータブル電源は在宅避難用に家に置く。モバイルバッテリーは持ち出し用にリュックに入れる。上位互換の関係ではなく、想定している場面が違う道具です。家が無事なら在宅避難の可能性が高いのでポータブル電源の出番の方が多いかもしれませんが、避難所に行くことになった瞬間、置いてきた電源は1Whも役に立たない。片方しか選べないなら、まずは持ち出せる方からです。
最後に
mAhの数字は、そのまま信じると期待を裏切ります。20000mAhは74Wh、実際に取り出せるのはその6〜7割、スマホ1回が13Wh前後。この3つの数字さえ頭に入れておけば、パッケージの「約5回」を自分で検算できます。
そして買った後の方が大事です。半年放置して残量25%だった私が言うのもなんですが、防災用のバッテリーは3ヶ月に1回充電し直して初めて戦力になります。カレンダーに繰り返し予定を1つ入れるだけの手間。
停電がいつ来るかは分かりません。ただ、来たときにスマホの残量を気にしながら情報収集する状況だけは避けたい。そのための74Whです。
この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

