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避難所として指定されている小学校の体育館を、去年の秋に一度見に行きました。備蓄倉庫の中身を見せてもらえる防災訓練の日で、そこで確認できたのは毛布と、ブルーシートと、段ボールベッドが数十台。寝袋はありませんでした。
担当の方によると、毛布は基本的に1人1枚。それ以上は在庫と人数次第、という話でした。つまり床に敷くものと掛けるものを、毛布1枚で兼ねることになる。10月の体育館でこれはかなり厳しいんじゃないか、と思ったのが、コンパクトに収まる寝袋を買った直接のきっかけです。防災リュックの中身を一通り揃えたあとで、最後まで残っていた穴でもありました。
フローリングで一晩寝たら、硬さより底冷えがきつかった
買う前に、まず自宅で試しました。リビングのフローリングに直接、掛け布団だけ持ち込んで寝てみる。11月の夜で、エアコンは切りました。妻には「何やってるの」と言われましたが、体育館の床がどんなものか一度は体験しておきたかったんですよね。
覚悟していたのは硬さのほうでした。腰が痛くなるだろうと。実際、深夜2時ごろに一度目が覚めて肩が痛かったので、それは当たっています。ただ本当につらかったのは別のところで、背中側から体温が抜けていく感覚でした。上から布団をかけていても、床に接している面がずっと冷たい。明け方の4時ごろには足先が冷えて、それ以上眠れませんでした。翌日は一日中だるかったです。
自宅のフローリングでこれなので、コンクリートの上に薄い床材を敷いた体育館ならもっと下がるはずです。ここで学んだのは、寝袋に求めるものは「掛け布団の代わり」ではなくて「床との断熱」だということでした。地面に接する面の作りを見ないと意味がない。マットを別に用意する話にもつながるんですが、まずは寝袋の底面がどれくらい厚みを保てるか、というのが選定の軸になりました。
マミー型を先に買って、結局返品している
最初に注文したのはマミー型でした。体に沿った形で、頭まですっぽり覆えるタイプ。スペックだけ見れば圧倒的に有利なんです。同じ中綿量なら体との隙間が小さいぶん、暖まった空気が逃げにくい。登山用がほぼマミー型なのは理由があるわけで、私も数字で納得して選びました。
届いて、リビングで一度入ってみて、その日のうちに返品手続きをしました。理由は単純で、子どもを抱えられなかったからです。当時生後4ヶ月だった息子が夜中に泣いたとき、寝袋の中にいる自分がどう動くかを想像したら、まず両腕を抜いて、ファスナーを下ろして、足を出して、という手順が要る。マミー型は肩から下がすぼまっているので、上半身を起こすだけでも一動作です。あと単純に圧迫感が強くて、寝返りを打つと寝袋ごと回りました。
封筒型は逆に、四角い布団をそのまま袋にしたような形です。中で膝を立てられるし、ファスナーを開ければ腕だけ外に出しておける。保温性はマミー型に劣ります。これは構造上どうしようもない。それでも、夜中に子どもを抱き上げるという動作が発生する前提なら、封筒型以外の選択肢はありませんでした。子どもが小学生になったらマミー型に買い替えてもいいと思っています。
収納サイズは、防災リュックの空きスペースから逆算した
暖かさとコンパクトさは基本的にトレードオフです。中綿を増やせば暖かくなり、そのぶん畳んでも小さくならない。当たり前の話なんですが、通販の商品ページを眺めていると「超軽量」と「超暖かい」が同じ商品説明に並んでいたりして、感覚が狂ってきます。
なので私は先に上限を決めました。うちの防災リュックは30リットルで、水2リットル×2本、食料3日分、簡易トイレ、モバイルバッテリー類を入れた時点でほぼ埋まっています。寝袋に割ける容積を実際に測ったら、直径20センチ・長さ35センチくらいの円筒がぎりぎり。重さも、リュック全体を10キロ以内に収めたかったので、寝袋は1.5キロが上限という数字が出ました。
この上限を先に決めておくと、選択肢がかなり絞れます。冬山を想定した本格的なモデルは容積オーバーで最初から消える。逆に極端に薄い夏用は、価格が安くて心が動くんですが、床からの冷えを止められないので却下。残るのは中間のクラスだけでした。ちなみに収納袋に入れた状態のサイズは商品ページに書いてあっても、実際に自分で畳むと初回はまず入りません。うちも最初、袋に戻すのに10分かかりました。空気を抜きながら押し込むコツを掴むまで数回かかります。
車中泊まで想定すると、条件がもう一つ増える
避難所が定員に達していたり、感染症が流行していたりすると、車で寝る選択肢が現実的になります。うちも一時的な避難先として車を考えていて、そうなると寝袋に求める条件が変わってきました。
体育館の床なら体を伸ばして寝られます。でも車内は違う。うちのコンパクトカーは後席を倒しても、フルフラットとは言い難い段差が残ります。実際に寝袋を持ち込んで測ったら、まっすぐ足を伸ばせる長さが約170センチしかありませんでした。私は身長172センチなので、つま先が浮く。ここでマミー型だったら足元がすぼまっているぶん、膝を曲げた姿勢を強いられて相当きつかったと思います。
封筒型のもう一つの利点がここで効きました。ファスナーを全開にすれば1枚の掛け布団として使えるので、姿勢の自由度が高い。窮屈な車内では「寝袋に入る」より「寝袋を掛ける」ほうが現実的な場面が多いんですよね。あと足を伸ばせないと血流が悪くなってエコノミークラス症候群のリスクが上がるとされていて、車中泊ではこれが一番怖い。姿勢を変えられる寝具かどうかは、暖かさと同じくらい優先度が高いと考えています。
「オールシーズン対応」は、温度の数字を見るまで意味がない
商品名に「オールシーズン」と書いてある寝袋は山ほどあります。ただこの言葉自体には基準がないので、そのまま信じると痛い目を見ます。見るべきなのは温度表記のほうです。
寝袋の温度表記は一般的に、快適に眠れる温度と、耐えられる限界の温度が分けて示されます。快適使用温度は「寒さを感じずに眠れる目安」、限界使用温度は「丸まった姿勢でなんとか耐えられる目安」とされていて、この2つには10度前後の開きがあることも珍しくありません。つまり限界使用温度マイナス5度の寝袋は、マイナス5度で快適に眠れる寝袋ではない。商品ページに大きく出ているのは、たいてい数字の見栄えがいい限界側です。そこだけ見て選ぶと、実際の使用時に想定より寒い。
私が最終的に買ったのは、封筒型で4タイプから選べる寝袋です。限界使用温度が5度・マイナス5度・マイナス15度のモデルに分かれていて、重量もそれぞれ1キロ、1.4キロ、1.8キロ。価格は1,980円からで、230T生地の撥水仕様、丸洗いできて、同じものを2つ買えば連結もできます。私は真ん中のマイナス5度・1.4キロを選びました。リュックの上限1.5キロにぎりぎり収まる範囲で、一番暖かいものを選んだ形です。
不満もあります。まず収納袋がかなりタイトで、前述のとおり畳んで戻すのに慣れが要ります。急いで避難する場面でこれを畳む余裕はないので、実質「一度出したら袋には戻さない」つもりでいたほうがいい。それとファスナーの滑りは値段なりで、生地を1回噛みました。勢いよく引くと引っかかるので、少し手で押さえながら動かす必要があります。この価格帯にダウンのような軽さと圧縮性を期待するのは筋違いで、あくまで化繊の中綿として妥当な性能、という評価です。
洗えるかどうかは、地味に効いてくる
買うときにあまり重視していなくて、あとから重要だと気づいたのが洗濯です。避難生活が3日で終わるとは限らない。1週間、2週間と続いた場合、同じ寝袋で寝続けることになります。
水が使える環境に戻ったとき、丸洗いできるかどうかで衛生面の話が変わってきます。汗も吸うし、子どもがいれば吐き戻しやおむつ漏れも普通にある。実際うちでは購入から2ヶ月で1回、息子のミルクの吐き戻しで洗う羽目になりました。洗濯機のドラムに入れて、ネットに入れずに単独で回して、干すのに丸2日。厚みがあるので乾きは遅いです。ただ洗えなければ捨てるしかなかったので、この機能は完全に元を取っています。
もう一つ、平常時に使うことをおすすめしたいです。うちは来客用の布団を持っていないので、義母が泊まりに来たときにこの寝袋を出しました。実家の父が来たときも同じ。年に2、3回は使う機会があって、そのたびにファスナーの状態や中綿のへたり具合を確認できます。押し入れに5年放置した寝袋がいざというときに使えるかどうか、誰も分からない。定期的に出して使うことが、そのまま点検になるんですよね。キャンプに持ち出せればもっといいんですが、子どもが小さいうちはまだ先の話です。
最後に
寝袋は防災グッズの中で、優先順位が高いとは言いにくいものだと思います。水と食料と簡易トイレを揃えるのが先。実際うちも、リストの一番最後に残っていました。
ただフローリングで一晩過ごしてみて、考えが変わりました。眠れないと判断力が落ちます。避難生活で必要なのは、次に何をするか決める力で、それは睡眠の質に直結する。2,000円前後で床からの冷えを止められるなら、費用対効果としてはかなりいいほうです。
今は防災リュックの一番上に、圧縮した状態で入れています。袋から出したのは、義母が泊まりに来た夜と、息子が吐いた日の2回だけ。使う回数が少ないまま古びていくのが、この道具にとっては一番いい終わり方だと思っています。
この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

