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避難所での就寝対策は寝袋を買った時点で終わったと思っていました。封筒型の寝袋が2つ、防災リュックの横に積んである。これで床でも寝られる、と。
その思い込みが崩れたのは、リビングのフローリングに寝袋だけ敷いて一晩試した日です。結論から書くと、眠れなかった理由は寒さではなく、床の硬さと、下から上がってくる冷えでした。寝袋は体の上と横を包む道具であって、体の下は自分の体重で潰れてほぼ布1枚になる。当たり前のことなんですが、実際に横になるまで気づいていませんでした。それで買い足したのがエアマットです。
寝袋の下は、自分の体重で潰れて布一枚になる
試したのは3月の週末、深夜0時から朝までです。暖房を切った室内で、フローリングに寝袋を直に敷いて入りました。室温は明け方で14度くらい。寝袋の快適温度域には収まっているはずでした。
最初の30分は問題ありません。むしろ暖かい。異変が出るのは1時間を過ぎたあたりからで、まず腰と肩甲骨が痛くなる。横向きになると今度は骨盤の出っ張りが当たる。仰向けと横向きを15分おきに繰り返しているうちに、完全に目が冴えてしまいました。
そしてもうひとつが底冷えです。背中側だけが冷たい。寝袋の中綿は体重がかかると圧縮されて、空気の層がなくなります。空気の層がなければ断熱もない。フローリングは熱を吸うので、背中の熱が延々と床に流れていく感覚がありました。結局3時半に起きてソファに移動しています。自宅で、暖房を止めただけの環境で、この結果でした。
体育館の床はもっと硬く、もっと冷たいはずです。しかも周りに人がいて途中でソファに逃げることはできない。寝袋の性能を上げるより、下に何を敷くかを先に決めるべきだったというのが、この夜の教訓です。
厚さ1cmと10cm、フローリングで直接比べた
最初に用意したのは、ホームセンターで700円ほどで買った銀色のレジャーマットです。厚さは実測で8mm。折りたたむとかなりコンパクトで、これで十分だろうと思っていました。
敷いて寝てみると、確かに冷たさは減ります。アルミ蒸着面が体熱を反射するらしく、背中の冷えは体感で半分くらいになりました。ただし硬さについてはほぼ無力です。腰が痛くなるまでの時間が1時間から1時間半に延びた程度。8mmでは体重が集中する部分がすぐに底付きします。
次にキャンプ用の厚手のエアマットを借りて、同じ場所で寝ました。厚さ10cm。これは体感がまったく違って、腰が沈み込んで面で支えられている感じになります。寝返りを打っても骨が床に当たる感覚がない。朝まで一度も目が覚めませんでした。
その後、家にあった折りたたみマット(厚さ3cm)でも試しています。3cmだと、痛みは出ないものの寝返りのたびに床の存在が分かる。感覚的な境目は5cmあたりで、それ未満は「マシになる」、それ以上は「床を忘れられる」に変わる印象でした。避難所を想定するなら、私は最低5cm、できれば8〜10cmを選びます。厚さ8mmのレジャーマットは、いまは車のトランクで荷物の下敷きになっています。
膨らませ方の違いが、そのまま停電時の差になる
厚さが決まると、次は膨らませる手段です。ここは想像以上に選択肢があって、しかも防災用途だと評価が逆転します。
まず口で吹くタイプ。10cm厚のマットを肺活量だけで満タンにするのは、想像の3倍きついです。試しに片方を口だけで膨らませたことがありますが、7分かかって途中で軽く頭がくらくらしました。過呼吸気味になるので、閉め切った車内や体育館の隅でやりたい作業ではありません。緊急時の予備手段としては使えますが、これを常用するのは無理です。
電動ポンプは楽です。スイッチを入れて1分で終わる。ただし災害時に一番使えないのがこれなんですよね。コンセント式は停電した時点で終わり。USB充電式でもモバイルバッテリーの残量を空気に使うことになります。スマホの充電すら惜しい状況で、マットを膨らませるために5%削る判断ができるか。私は最初、電動ポンプ付きのエアベッドを買いかけていて、レビューを読んでいる途中でこれに気づいて注文をやめました。
残るのが足踏み式と自動膨張式です。足踏み式は本体にフットポンプが内蔵されていて、電源なしで踏むだけで空気が入る。自動膨張(インフレーター)式は中のウレタンが復元する力で勝手に吸気して、最後だけ口で足す方式です。どちらも電気を使いません。防災を主目的にするなら、私はこの2つのどちらかだけを候補にすべきだと思っています。
買ったのは10cm厚・足踏み式のエアマット
最終的に選んだのは、厚さ10cmで足踏み式ポンプを内蔵したエアマットです。価格は7,000円台。枕が一体になっていて、補修テープが同梱されているタイプを選びました。
実測で、踏み始めてから使える硬さになるまでだいたい40秒。商品表記では30秒とありますが、パンパンにするならもう少しかかります。それでも電源を探さなくていいのは大きい。子どもを抱っこしたまま片足で踏むこともできました。
不満もあります。足踏み時の音がそれなりに大きい。ポンプを踏むたびに「ボコッ、ボコッ」と低い音が出るので、深夜の避難所で遠慮なくやれる音量ではありません。設営は消灯前に済ませておく必要があります。あとは空気の量を微調整しにくい点。パンパンに入れると跳ね返りが強くて、むしろ寝心地が落ちます。バルブから少し抜いて7〜8割にしたほうが体が沈んで楽でした。この「少し抜く」の加減が最初はつかめず、3日ほど調整に使っています。
断熱性の指標としてR値4.0と表記されています。R値は数字が大きいほど床からの冷えを遮る性能が高いとされる指標で、一般的に3以上あれば秋冬の地面でも使えると言われる範囲です。実際、寝袋だけのときにあった背中の冷たさは感じませんでした。ただしこれはメーカー表記の数値なので、氷点下の環境まで保証されると考えるのは危険だと思っています。
パンクの心配と、防災リュックに入らないという現実
空気で膨らむ以上、パンクのリスクはついて回ります。ここが折りたたみマットとの決定的な差です。
気になるのは避難所の床の状態です。地震のあとの体育館は、窓ガラスの破片や天井材の破片が落ちている可能性がある。掃除が済む前に人が入ることも十分あり得ます。そんな場所に、薄いポリエステル生地のマットを直接敷くのはかなり怖い。結局、いま出番のなくなったレジャーマットを下敷きにして、その上にエアマットを載せる運用に落ち着きました。捨てなくてよかったです。銀マットは断熱の底上げにもなるので、二重にしておく意味はあります。
それでも穴は開くものとして、補修テープの位置は先に確認しておきました。付属の小さなテープが収納袋の内ポケットに入っていたんですが、これは開封時に一度取り出して、袋の口紐に結んでおくのがおすすめです。暗い避難所で内ポケットを探るのは現実的じゃない。試しに古い浮き輪で貼ってみたところ、10分ほど置けば空気は止まりました。
そして最大の弱点が収納サイズです。畳んだ状態でおおよそ直径20cm・長さ40cmくらいの筒になります。重さは1.5kgほど。持ってみると軽いんですが、これを30リットルの防災リュックに入れると、他のものがほとんど入らなくなる。実際に一度詰めてみて、水2リットルと食料を入れた時点で蓋が閉まりませんでした。
なので、うちは割り切っています。リュックには入れない。車のトランクに1枚、玄関のシューズクローゼットの上段に1枚。徒歩避難で持ち出すのは諦めて、車で動ける場合と、在宅避難で床に寝る場合に使う装備という位置づけにしました。持ち出し用にはアルミの薄いシートを別に入れてあります。全部を1つのリュックに詰めようとすると、たいてい破綻するんですよね。
子どもが寝返りで落ちるので、連結できるものを選んだ
これは実際に使うまで想定していなかった話です。1枚のマットは幅60cm前後で、大人が1人寝るぶんには十分。ただ、生後半年の子どもを真ん中に寝かせて大人が両脇、という配置にすると、当然まったく足りません。
リビングで試したときは、寝返りを覚えたばかりの子どもが夜中に横に転がって、マットの縁から半分落ちていました。10cmの段差なので怪我はしませんが、頭だけ床に落ちて泣く。避難所で夜中に泣かれるのは、こちらの精神的な負担がかなり大きいはずです。
買ったマットは側面に連結用の面ファスナーが付いていて、同じものを横に繋げられます。2枚繋ぐと幅120cmを超えるので、大人2人と乳児が並んで寝られる面積になりました。繋ぎ目に多少の溝はできますが、子どもをそこに寝かせなければ気になりません。エアマットを検討するなら、将来2枚目を足せるかどうかは先に確認しておいたほうがいいと思います。1枚目と別メーカーになると、まず繋がらないので。
結局、平常時のほうが出番が多い
買って半年経ちますが、防災用として出したのは点検を含めて3回。それ以外の出番のほうが圧倒的に多いです。
実家から義理の両親が泊まりに来たとき、来客用の布団が足りずにこれを出しました。翌朝「意外とよく眠れた」と言われて、正直ほっとしています。あとはキャンプ場での車中泊。後部座席を倒すと段差ができるんですが、10cmあると完全に埋まって平らになりました。
防災グッズは買ったまま置いておくと、いざというときにバルブの向きを間違えたりします。年に数回でも使っておけば手順が体に入る。エアマットは平常時に出番がある数少ない防災装備なので、そこは選んで正解でした。次に義理の両親が来る前に、もう1枚買い足すか検討中です。
この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

