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防災グッズを一通り揃えたあとで、一番手こずったのは買い物ではなく置き場所でした。水を1週間分と考えると、3人ぶんで3L×3人×7日=63L。2Lのペットボトルで32本、6本入りの箱で5箱半です。これが玄関に積み上がった週末、妻が無言でその横を通り過ぎていったのを覚えています。
うちは2LDKの賃貸で、収納は押し入れが一つとクローゼットが二つ。そこにはすでに季節物の服とベビー用品が入っています。空いているスペースはほぼゼロ。防災グッズ収納の記事はいくつも読みましたが、どれも前提として「収納スペースがある家」の話に見えました。ここでは、なかった側の記録を書きます。
置き場所を決めるのに1ヶ月かかった
買うのは簡単なんですよね。リストを見ながらカートに入れて、届いたら開封する。そこまでは1週間で終わりました。問題はその次です。段ボールのまま玄関脇に積んでおいたら、生後5ヶ月の子を抱えた妻がベビーカーを出すたびに箱をまたぐことになった。3日でクレームが来ました。
かといって押し入れに突っ込むと、今度は手前の布団をどけないと取り出せない。夜中に地震が来て、暗闇のなかで布団をどけて奥の箱を引っ張り出す。無理です。この時点で気づいたのは、防災グッズの収納は「しまう」問題じゃなくて「取り出す」問題だということでした。しまうだけなら押し入れの奥が最強です。でも取り出せないなら意味がない。
結局、置き場所が固まるまで1ヶ月かかりました。途中で一度全部出して並べ直しています。
「一箇所にまとめる」は、たぶん間違い
最初に考えたのは、防災用品を全部一箇所に集める案でした。管理が楽だし、点検もしやすい。押し入れの下段を丸ごと防災コーナーにしようと思っていました。
これをやめたのは、単純な想像をしてみたからです。その部屋に入れなかったらどうするのか。寝室のドアの前に何かが倒れていたら、あるいは玄関側が塞がれていたら、全部そこに置いてある防災用品にはたどり着けない。備蓄をゼロから買い直すのと同じ状態になります。
玄関にまとめるのも同じ理由で怖い。玄関は避難経路そのものなので、そこに50Lの箱を積んでおくと、平常時はベビーカーの邪魔になり、非常時は出口の邪魔になる可能性がある。実際、最初の1週間で妻から指摘されたのがまさにこれでした。
だから分散させることにしました。管理の手間は増えます。でも、どこか一箇所がダメになっても残りが生きる。効率より冗長性を取った、という言い方が近いかもしれません。
3つの層に分けると、置き場所が自動的に決まる
分散といっても適当にバラすと管理不能になるので、用途で3層に分けました。これが一番効きました。
- 第1層:身につける・枕元に置く。停電した瞬間に手が届く必要があるもの
- 第2層:持ち出す。家を出るときに掴んで走れるもの
- 第3層:在宅避難用の備蓄。数日〜1週間、家で耐えるためのもの
この分け方をすると、置き場所は考えるまでもなく決まります。第1層は寝室、第2層は玄関、第3層は押し入れとクローゼット。逆に言うと、これまで置き場所に迷っていたのは、そのグッズがどの層のものか自分で分かっていなかったからでした。
第1層:枕元は「箱」ではなく「袋」にした
寝室の枕元に置いたのは、ヘッドライト、スリッパ代わりの底の厚いサンダル、笛、スマホの充電用モバイルバッテリー。それとメガネです。私は視力0.1以下なので、これがないと避難以前の問題になります。
最初は小さい収納ボックスに入れていたんですが、寝ぼけた状態で蓋を開けるのが意外と手間でした。今は巾着袋を一つ、ベッドの脚に紐で結んであります。袋なら手を突っ込めば取れる。見た目は良くないです。
第2層:玄関は「置く」より「掛ける」
玄関に置いたのは防災リュック2つだけ。床には置かず、シューズボックス横の壁に取り付けたフックに掛けています。賃貸なので、石膏ボード用の細ピンで留めるタイプのフックです。耐荷重が5kgまでのものを選んだので、リュックは1つ約4kgに抑えました。
床に置かないだけで、玄関の印象がかなり変わります。ベビーカーの出し入れも邪魔されない。掛けたほうが日常の摩擦が小さいというのは、置いてみるまで分かりませんでした。
重いものを高い場所に置いてはいけない
第3層の備蓄を押し入れとクローゼットに移すとき、最初は水をクローゼットの上段に上げました。下段には子どものおむつストックがあって、そこを空けたくなかったからです。
2Lペットボトル6本の箱は約12kg。これを頭より高い位置に3箱。並べ終わってから見上げて、正気じゃないなと思いました。地震で棚板が揺れたら、12kgの塊が頭上から落ちてくる。防災のために置いたものが凶器になります。
翌日、全部下ろしました。今は重いものはすべて床から50cm以内と決めています。クローゼットの上段に入れているのは、トイレットペーパー、ティッシュ、簡易トイレの凝固剤といった軽くて落ちても痛くないものだけ。水と食料は下段と、あとはベッド下です。
ベッド下は最初まったく想定していなかったんですが、うちのベッドは下に14cmの隙間がありました。2Lペットボトルは横に寝かせれば入ります。ここに水を1箱と、レトルト食品を平たいケースで1つ。取り出しやすいうえに、地震で落ちてくる心配が構造上ありません。狭い部屋だと、この14cmはかなり大きいです。
押し入れは「手前」と「奥」を最初に決める
押し入れは奥行きが80cmくらいあります。ここに何も考えずに箱を並べると、奥の箱は一生取り出せません。
そこで、手前に置くものと奥でいいものを最初に線引きしました。手前は、停電したその日から使うもの。カセットコンロとボンベ、簡易トイレ、ランタン、ラジオ。奥は、備蓄の予備分です。水と食料のうち、後半に使うぶんは奥でいい。手前の1箱を消費したら、そのタイミングで奥から引き出せば済みます。
実際にやってみると、この線引きをしていなかった頃は、何かを取り出すたびに手前の箱を一度外に出していました。今は手前の3箱だけで日常の点検が完結します。
収納ボックスは中身が見えない。だからラベルを貼る
備蓄の箱として使っているのは、リスのトランクカーゴ50Lです。楽天で3,480円でした。もともとキャンプ用のコンテナですが、蓋を閉めたまま上に人が座れるくらいの強度があって、積み重ねられる。屋外前提の作りなので、押し入れの下段に置いても底が湿気で抜ける心配がない。
不満もあります。まず中身がまったく見えない。半透明のケースと違って、開けるまで何が入っているか分かりません。それと50Lは思ったより大きくて、外寸で幅60cm×奥行39cm×高さ38cmほどあります。うちの押し入れは下段の高さがぎりぎりで、上に何も積めませんでした。買う前に測るべきでした。50Lにこだわらず30Lを2つにしたほうが、たぶん取り回しは良かったです。
中身が見えない問題は、ラベルで解決しました。側面にマスキングテープを貼って油性ペンで「水・食料」「トイレ・衛生」と書く。これだけでも十分ですが、もう一手間加えて、蓋の裏側に中身リストを紙で貼りました。品名と数量と、いちばん近い賞味期限。開けた瞬間に何がいくつあるか分かるので、点検が5分で終わります。リストは書き直せるようにクリアファイルを切ったものに挟んであります。
リビングに置く箱は、見た目で選ぶことになる
備蓄を全部押し入れに入れると、今度は日常的に目に入らなくなって存在を忘れます。なので、ローリングストック用の食料と水を一部だけリビングに置くことにしました。
ここで初めて、見た目が条件に入ってきます。リビングにコンテナボックスを置くと、はっきり生活感が出るんですよね。妻が難色を示したのもここでした。結局、テレビ台の横に置く分だけは、木目調のフタ付きバスケットに移しました。中身はレトルトのごはんとカレー、それと500mlの水が12本。防災用品には見えません。
この見た目のための箱に3,000円ほど使っています。防災的には無駄な出費です。でも、リビングに置けなければローリングストック自体が続かないので、必要な3,000円だったと思っています。
半年に一度、開けられる場所であること
置き場所の最後の条件が、点検のしやすさでした。備蓄は置いて終わりではなくて、賞味期限が来ます。長期保存水で5年、レトルトで1〜2年、乾電池も自己放電します。半年に一度は開ける前提の物体なんですよね。
うちはカレンダーに4月と10月で繰り返し予定を入れました。実際に1回目をやってみて分かったのは、開けるのが面倒な場所に置いたものは、点検されないということです。クローゼットの一番奥に入れた乾電池のストックは、正直に言うと1回目の点検で見落としました。
取り出しやすさと点検しやすさは同じ条件です。非常時に取り出せない場所は、平常時にも開けられない。逆に言えば、半年に一度気軽に開けられる場所なら、その場所は非常時にも機能する可能性が高い。置き場所を決めるときの判断基準として、これが一番使いやすかったです。
最後に
狭い部屋での防災グッズ収納は、結局のところ「どこに空きがあるか」ではなく「どこなら取り出せるか」から逆算する作業でした。空いている場所に押し込むと、置いた瞬間は片付いて見えるのに、いざというとき使えない。1ヶ月かけて並べ直して、ようやくそこに気づいた感じです。
今の配置が正解かどうかは、正直まだ分かりません。実際の地震で試したことがないので。ただ、少なくとも半年ごとの点検は回るようになったし、玄関で妻が箱をまたぐこともなくなりました。そこまでは確実な進歩だと思っています。
この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

