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防災グッズを真面目に揃え直したのは、子どもが生まれて3ヶ月ほど経った頃でした。自治体のPDFや防災サイトのチェックリストを印刷して、上から順に潰していく。水、食料、ラジオ、モバイルバッテリー、簡易トイレ。ひと通り揃えて、それなりに満足していたんです。
で、ある夜。ミルクを作りながらふと気づきました。このリスト、赤ちゃんの分が1行も書いてない。
正確には「乳児のいる家庭は別途ミルク・おむつを」と一言添えてあるものはありました。ただ、何をどれだけ、という話は一切なし。水が1人1日3リットルという数字はあれだけ具体的なのに、赤ちゃんの欄だけ空白なんですよね。仕方ないので自分で数えることにしました。生後5ヶ月の子を実際に育てながら、今どれだけ消費しているのかを。
「1人1日3リットル」に、赤ちゃんは入っていない
水は1人1日3リットル、最低3日分、できれば1週間分。食料も最低3日、推奨1週間。簡易トイレは1人1日5回程度で計算する。このあたりは資料によって差はあれど、目安としてはおおむね共通しています。
問題は、この「1人」に赤ちゃんを含めていいのかという話です。飲む量だけ見れば大人より少ない。でも赤ちゃんは、ミルクを作るための水が別に要る。しかもそれは煮沸した湯冷ましであるべきで、ペットボトルの水をそのまま使えば済む話でもありません。硬水は乳児に向かないとされているので、備蓄する水の種類まで選ぶことになります。
つまり赤ちゃんは「大人0.5人分」ではなく、別の計算式が要る存在なんです。気づいてから、防災リストは大人用と赤ちゃん用の2枚に分けました。
おむつは1日何枚要るのか、実際に数えてみた
まずは一番わかりやすいおむつから。1週間、替えた枚数をメモアプリに記録してみました。生後5ヶ月のうちの子で、1日あたり6枚から8枚。平均すると7枚弱です。うんちの回数が多い日は9枚いくこともある。
これを日数で掛けます。3日分なら約21枚、1週間分なら約49枚。丸めて「3日で25枚、1週間で50枚」を基準にしました。テープタイプのSサイズが1パック70枚前後なので、封を切っていないパックが1つあれば1週間はもつ計算です。
ただ、この数字は月齢でごろっと変わります。新生児の頃は1日10枚以上替えていました。逆に1歳を過ぎると5枚前後まで減っていくらしい。一度計算して終わりにできないのが、おむつの厄介なところです。
私の失敗談なんですが、生後2ヶ月のときにSサイズを箱買いして押し入れに入れておいたんです。「これで安心」と思っていたら、2ヶ月半でMに上がってしまった。押し入れのSは急に「非常時に使えないおむつ」に変わりました。結局は普段使いで消化しましたが、そのまま置いていたら丸ごと無駄です。
それ以来、備蓄用も普段のストック棚の一番奥に置いています。手前から使って、減ったら買い足す。おむつの場合は賞味期限ではなく「サイズの期限」で回している感覚に近い。半年に1回思い出す運用では間に合いません。
あと地味に重要なのが、使用済みおむつの処分です。ゴミ収集が止まれば、当然おむつも家に溜まる。夏場だと数日で相当なことになります。防臭袋を50枚ほど別枠で持っておくと精神的な余裕がまるで違う。簡易トイレの備蓄とほぼ同じ論点なので深追いはしませんが、「出す物」と「捨てる物」はセットで考えるとだけ覚えておくと抜けが減ります。
備蓄するミルクは、粉より液体を選んだ
最初は粉ミルクを多めにストックしておけばいいと考えていました。安いし、普段から使っているし。でも手順を書き出したら無理がありました。粉ミルクを1回作るには70℃以上のお湯が要る。お湯には火か電気が要る。作った後は人肌まで冷ますためにまた水が要る。哺乳瓶は毎回洗って消毒する。停電と断水が同時に来たら、この工程で成立するものがひとつもありません。
その点、液体ミルクは開けてそのまま飲ませられる。お湯も水も冷ます時間も要らない。災害時に液体が推奨される理由は、要するにこの一点です。
我が家が備蓄しているのは森永の「はぐくみ 液体ミルク」のパウチタイプ。100mlの使い切りで、20袋セットが5,355円です。缶や紙パックもありますが、パウチにしたのは持ち出し袋に押し込みやすいから。缶は角が硬くて他の物を圧迫するし、空になっても嵩が減りません。パウチなら飲み終わればぺしゃんこになります。
短所ははっきりあります。まず高い。20袋で5,355円は、100mlあたり約268円。粉ミルクなら同じ100ml分が45円前後なので、単価で5〜6倍です。1週間ぶん全部を液体で賄おうとすると、生後5ヶ月で1日800ml前後として7日で56袋、1万5千円ほどになります。正直、そこまでは振り切れていません。
もうひとつが賞味期限。粉ミルクは未開封で1年半程度もつものが多いのに対し、液体ミルクは容器によって半年から1年程度と幅があります。パウチや紙パックは短めの設定が多い。置いておくだけの備蓄だと、気づいたときには全部切れています。
そこで外出用と備蓄用を分けるのをやめました。実家に帰るとき、健診で長く出かけるとき、夜中に私が担当するとき。普通に消費して、使ったぶんだけ買い足す。「箱を開けずに保管する」やり方をやめた瞬間に、期限切れの問題は9割消えました。
非常時に初めて飲ませる、は失敗する
これは実際にやらかしました。液体ミルクを買って手をつけずに置いていた時期があって、ある日ためしに飲ませたら、一口飲んで顔をしかめてそのまま拒否。普段の粉ミルクとは味も温度も違うので、当然といえば当然です。
試していなければ、非常時に初めて開けて初めて拒否されていた。備蓄が無駄になるどころか、その場で代替手段がありません。液体ミルクを備えるなら、平時に最低1回は飲ませて反応を見ておくべきです。銘柄で味も違うので、うちは2種類ためして飲んだほうを備蓄用にしました。
哺乳瓶をどうするか、という盲点
液体ミルクを備えても、注ぐ先がなければ意味がない。断水中に哺乳瓶を洗って消毒するのは現実的に厳しいです。洗剤、すすぎの水、消毒用の熱湯か薬液と、芋づる式に必要なものが出てきます。
解決策は2つありました。ひとつが使い捨て哺乳瓶。滅菌済みで個包装されていて、使ったら捨てる。1本200〜300円ほどで、洗浄も消毒も不要です。かさばらないので持ち出し袋に3〜4本。ただし乳首の形が普段のものと違うため、嫌がる子は一定数います。これも一度は試しておいたほうがいい。
もうひとつが、容器に乳首だけ付け替えるタイプのアタッチメント。液体ミルクの缶や紙パックに直接装着して飲ませるもので、哺乳瓶そのものが不要になります。ただし対応する容器の形が決まっていて、パウチには直接付かないものが多い。そこは我が家も使い捨て哺乳瓶で補っています。
完全母乳の家庭にも、ミルクの備えは要ると思う
「うちは完全母乳だからミルクの備蓄は不要」という判断は、気持ちとしてはよくわかります。母乳が出ている限り、水も湯も哺乳瓶も要らない。防災の観点だけ見れば、これ以上ないほど強い。
ただ、災害時には強いストレスや睡眠不足、水分・栄養の不足で母乳の分泌が一時的に減ることがあるとされています。避難所では授乳する場所の確保自体が難しいこともある。体調を崩して薬が必要になる場合もあります。
要するに、母乳が出るかどうかは、そのときの環境と体調に左右される。平時に安定していることと、非常時にも同じように出ることは別の話です。だから混合でも完全母乳でも、数日ぶんの液体ミルクと哺乳瓶は持っておく価値があると思っています。使わずに期限が来たら、それは何事もなかったということなので、むしろ良い結果です。
ミルクの備えを「保険」と位置づけ直してから、量の考え方もすっきりしました。1週間ぶん全部を液体にするのではなく、まず3日ぶんを液体で確保して、そこから先は粉ミルクと水でつなぐ。二段構えなら費用も現実的に収まります。
避難するときはベビーカーではなく抱っこ紐
荷物の話ばかり書いてきましたが、移動手段も外せません。避難のときにベビーカーは使えないと考えておいたほうがいいです。
地震のあとの道路は、割れたガラス、倒れたブロック塀、めくれたアスファルト、瓦礫でいっぱいになります。ベビーカーの車輪はああいう路面をまったく想定していない。段差ひとつで止まるし、人が密集した避難経路では幅を取る道具そのものが邪魔になります。
その点、抱っこ紐なら両手が空いた状態で移動できる。防災グッズとして語られることは少ないですが、乳児のいる家庭では最重要装備のひとつだと思っています。うちは玄関のフックに1本かけっぱなし。持ち出し袋に畳んで入れると取り出す手間が発生するので、玄関に露出させておくほうが理にかなっています。
ついでに書くと、抱っこ紐で移動するなら荷物はリュック一択です。前に子ども、後ろにリュック。この形が成立するか、一度背負って歩いてみるといい。私は試したときに、抱っこ紐のバックルとリュックの腰ベルトが干渉して締められないことに気づきました。
離乳食が始まって、備蓄リストが一段増えた
そして今まさに直面しているのがこれです。生後5ヶ月で離乳食を始めたところなんですが、備蓄品目が明らかに増えました。ミルクだけで完結していた頃のほうが、防災の観点では単純だった。
選ぶ基準にしているのは加熱せずにそのまま食べられるかです。ベビーフードにはお湯で溶くフリーズドライもありますが、防災用に置くならお湯の要らないものに限ります。瓶詰めはスプーンさえあればそのまま食べられて備蓄向き。ただし重くて割れるという短所があるので、持ち出し袋にはレトルトパウチ、家の備蓄には瓶詰め、と使い分けています。
それから月齢表示。「5ヶ月から」「7ヶ月から」という区分があって、おむつのサイズと同じで置いておくと月齢が追い越していきます。今は5ヶ月用を数個持っているだけですが、3ヶ月もすれば入れ替えが必要になります。
アレルギーの問題も避けて通れません。医療機関にすぐかかれない状況で初めての食材を試すのは、リスクが高すぎる。備蓄するのは、平時に食べさせて問題がなかった食材のものだけ。選択肢は狭くなりますが、ここは譲れません。
最後に
赤ちゃんがいる家の防災グッズは、大人用のリストに何かを足す作業ではなく、別のリストをもう1枚作る作業でした。しかもそのリストは数ヶ月ごとに中身が変わる。おむつのサイズが上がり、ミルクの量が増え、離乳食が始まり、そのうち普通のご飯になっていく。
押し入れのSサイズを見つけたときは私もうんざりしました。ただ、この「変わり続ける」性質こそが赤ちゃんの備蓄で一番押さえるべき点で、一度作って安心するのがたぶん一番危ない。3ヶ月に1回の見直し日をカレンダーの繰り返し予定に入れてしまうのが、いまのところ一番確実でした。
まずはおむつを1週間ぶん数えるところからです。自分の家の実数がわかれば、あとの計算はそこから全部逆算できます。
この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

