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子どもがハイハイを始めた週に、私はリビングの床に寝そべってみました。生後7ヶ月の視点で部屋を見たら何が見えるのか、という単純な確認です。目の前にあったのは、掃き出し窓の下端。ちょうど顔の高さでした。
地震で怖いのは揺れそのものより、揺れたあとの床だと思っています。棚から物が落ちる、食器が割れる、窓ガラスが飛ぶ。大人なら靴を履けば歩けますが、床を這っている子どもにとって、割れたガラスが散った床は文字通り足の踏み場がありません。それで飛散防止フィルムを買って、休日に自分で貼りました。結論から言うと、1枚目は完全に失敗しています。
割れたガラスは、思っているより遠くまで飛ぶ
ガラスが割れると、破片は窓の真下に落ちるだけではありません。割れ方によっては数メートル先まで飛びます。地震の被害報告でも、ケガの原因として割れたガラスや食器の破片は毎回上位に挙がる。転倒した家具の下敷きになるような派手な事故だけでなく、避難しようと歩いた床で足を切る、という地味な負傷が積み上がるわけです。
大人なら、枕元にスリッパか運動靴を置いておけばかなり防げます。うちも寝室のベッド下に古いスニーカーを1足ずつ置いています。ただ、これは自分で靴を履ける人間にしか通用しない対策なんですよね。抱き上げて運ぶにしても、私が裸足でガラスの上を歩いたら結局同じことです。
それに、割れるのは窓だけではありません。うちの場合、リビングにあるのは掃き出し窓が1枚、腰高窓が2枚。加えて食器棚のガラス扉、玄関脇の姿見。数えてみると、家の中のガラス面は思っていたより多かった。
賃貸なので「元に戻せる範囲」から探した
うちは2LDKの賃貸マンションです。窓に何かするとなると、退去時の原状回復が頭をよぎります。突っ張り棒で家具を固定するのは問題ないとして、窓ガラスに直接何かを貼るのは大丈夫なのか。
調べた結果、飛散防止フィルムには水で貼るタイプと、シールのように直接貼る強粘着タイプがあることが分かりました。水貼りタイプは中性洗剤を薄めた水を吹きかけて位置を合わせる方式で、はがすときも比較的きれいに取れる。強粘着タイプは施工が楽な代わりに、経年ではがすと糊が残ることがある。賃貸なら前者一択でした。
買ったのはアサヒペンのUVカット ガラス飛散防止シート、92cm×180cmで3,135円。透明タイプで、貼ってしまえば見た目はほぼ変わりません。同じシリーズに食器棚用の幅32cm×1.8mという細いものもあって、こちらは後述しますが我が家では出番が多かった。
不満を先に書いておくと、1枚あたりのコストは決して安くありません。92cm×180cmで3,135円は、1平方メートルあたり約1,900円。うちの掃き出し窓はガラス1枚が幅約80cm×高さ約175cmで、これでほぼ1本使い切ります。2枚建てなのであの窓だけで2本、6,270円。家じゅうとなると平気で2万円を超えます。
あと、付属のスキージー(ヘラ)が頼りない。厚紙に近い薄さで、力を入れると反ります。私は途中で100円ショップのゴムベラに持ち替えました。これは最初から用意しておいたほうがいい。
貼る作業は、準備で8割決まる
用意したのは、フィルム本体、霧吹き(500ml)、台所用の中性洗剤、ゴムベラ、カッター、金属定規、乾いたタオル2枚、メジャー。フィルム以外は総額700円ほどです。
採寸は「実寸プラス2cm」で切る
まず窓ガラスの実寸を測ります。サッシのゴムパッキンの内側、つまりガラスが露出している部分の縦と横です。うちの腰高窓は幅78cm×高さ90cmでした。フィルムはここから縦横それぞれ2cmほど大きく切ります。ぴったりに切ると、貼っている最中に1mmずれただけで端に隙間ができるからです。大きめに切って、貼ったあとに余分を落とす。これが一番失敗しません。
掃除は執念深く。ホコリ1粒が気泡になる
次にガラスの清掃。ここを手抜きすると確実に後悔します。私は水拭き、洗剤で拭き、もう一度水拭き、最後にスクイジーで水を切りました。それでも足りません。問題はサッシの隅とパッキンの際に溜まった砂ぼこりで、乾いていると貼っている最中に舞ってガラス面に落ちます。綿棒と歯ブラシで隅を掘り返して一周。窓1枚につき10分近くかかります。
洗剤水は、薄すぎるくらいで作る
霧吹きに水を500ml入れて、台所用中性洗剤を2〜3滴。それだけです。よく振って混ぜます。私は最初「多いほうが滑るだろう」と考えて洗剤をドバッと入れたのですが、これは間違いでした。濃すぎると滑りはいいものの、いつまで経ってもフィルムがガラスに密着しない。数日経っても指で押すと動く状態になります。洗剤は滑らせるためではなく、位置を微調整する数十秒のためだけに入れると考えたほうがいい。
1枚目は気泡だらけ。2枚目からコツを掴んだ
最初に貼ったのは、一番目立つリビングの掃き出し窓。今思えばここが失敗の元です。大きい窓を、一人で、練習なしで。
ガラス面に洗剤水を吹き、フィルムの剥離紙をはがしながら粘着面にも吹く。この「はがしながら」がまず難しい。透明フィルムと透明の剥離紙はどこが境目なのか分かりにくく、爪でカリカリやっているうちにフィルムが手に貼りついて、粘着面同士がくっつきました。ここで一度、無理やり引きはがしてシワを作っています。
さらに、粘着面への洗剤水が明らかに足りなかった。ガラスに乗せた瞬間に一部が食いついて動かなくなり、位置を直そうと引っ張ったらまたシワ。ゴムベラで水を押し出す段階では、すでにホコリを3箇所ほど噛み込んでいました。所要時間40分、結果は気泡が十数個。妻に「あそこ、なんか曇ってる?」と言われました。
2枚目の腰高窓でやり方を変えました。変えたのは3つです。剥離紙はマスキングテープを角に貼って引っぱると簡単にはがれる。粘着面には「垂れるくらい」洗剤水を吹く。ゴムベラは中央から上下左右へ、放射状に少しずつ押し出す。特に3つ目が効きました。端から一方向にやると、水と一緒に空気が行き止まりに追い込まれて逃げ場がなくなるんですよね。
2枚目は15分で、気泡は2つだけ。しかもその2つは数日で消えました。押し出しきれなかった水分は、時間をかけて端から抜けていきます。貼った直後に薄く白っぽく見えても、うちの場合は1週間ほどでほぼ分からなくなりました。逆に言うと、この期間はベタベタ触らないほうがいい。
余分のカットは、貼って水を押し出したあとに行います。金属定規をパッキンの際に当てて、カッターの刃を新しくしてから一息に。刃が鈍いとフィルムが伸びて、切り口が波打ちます。
大きい窓は、素直に2人でやったほうがいい
これが一番の教訓かもしれません。高さ175cmの掃き出し窓を一人で貼るのは、ほぼ無理です。フィルムの上端を左手で押さえながら右手でベラを動かすと、下半分が自重で垂れてガラスに勝手に貼りつく。脚立の上でこれをやるのは危ないうえに、結果もきれいになりません。
2枚目以降は妻に上端を持ってもらいました。一人が保持、一人が押し出し。それだけで仕上がりが変わります。子どもが昼寝している1時間に、二人で2枚。この配分がちょうどよかった。
全部の窓に貼ろうとすると、たぶん挫折する
最初は家じゅうの窓に貼るつもりでした。数えたら大小あわせて9面。フィルム代だけで2万円を超え、作業時間も休日が丸ごと消えます。実際、1枚目で心が折れかけました。
そこで優先順位をつけ直しました。うちが決めたのは、寝ている場所と、子どもが昼間いる場所から。寝室の腰高窓とリビングの掃き出し窓、この2箇所です。地震が起きたとき自分たちがそこにいる確率が一番高いから。深夜の地震で寝室の窓が割れれば、逃げる前にベッドの周りがガラス畑になります。
むしろ食器棚のガラス扉のほうが、優先度は高かった
作業を終えてから気づいたのですが、我が家で本当に危ないのはキッチンの食器棚でした。窓ガラスは外へ向かって落ちる分もありますが、食器棚の扉は割れれば確実に室内側、それも人が立つ場所に散ります。しかも中身は食器なので、扉が割れれば皿もろとも落ちる。
食器棚用の幅32cmのシートなら、扉2枚分でも1本で足ります。面積が小さいぶん貼るのも楽で、気泡もほとんど出ませんでした。所要時間は2枚で20分ほど。費用対効果で言えば、窓より先にここをやるべきだった。扉の開き止めラッチと組み合わせれば、キッチンの危険度はかなり下がります。
フィルムにできないこと、はっきりさせておく
貼り終えると忘れがちですが、これはガラスを割れなくするものではありません。できるのは、割れたガラスを膜の上に留めて床に散る量を減らすこと。それ以上でもそれ以下でもない。強い衝撃が来れば普通に割れますし、割れた面に触れれば当然切れます。「貼ったから窓の前に子どもを寝かせても平気」という結論には絶対にならない。
もう一点、劣化します。屋内側に貼るとはいえ紫外線と熱は受け続けるので、日当たりのいい窓ほど寿命は短い。製品や環境によって差が大きく、一般的には数年から10年程度で貼り替えを検討するものとされています。うちの南向きの掃き出し窓は、正直もっと早いだろうと見ています。端が浮いたり色が黄ばんできたら替えどき。貼った日付をシートの端に油性ペンで書いておくと判断しやすい。
それと、買う前に窓ガラスの種類を確認しておくこと。網入りガラスや複層ガラスは、フィルムの種類によっては熱割れの可能性が指摘されています。製品ごとに使用可否の注意書きがあるので、そこは必ず読む。うちは単板ガラスだったので問題ありませんでした。
最後に
休日を振り返ると、掃除に費やした時間が半分以上でした。貼る作業そのものは慣れれば1枚15分。難しいのは技術ではなく、ホコリを1粒残さないという地味な根気のほうです。
それでも、リビングの窓を見上げて「あそこが割れても床一面にはならない」と思えるのは、金額のわりに大きい変化でした。家具の固定も、寝室の靴も、避難経路の確保も、全部やって初めて意味が出る。そのうちの1つとしては、休日の午前中を使う価値はあったと思っています。
次は北側の小窓と寝室の姿見。今度は最初から2人でやります。
この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

