ローリングストック|続けられる備蓄の仕組みの作り方

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去年の秋、5年保存のアルファ米セットを買いました。50食入りで、押し入れの上段にきれいに収まった。これで食料は片付いた、と本気で思っていたんですよね。

問題に気づいたのはその数日後です。賞味期限は2030年11月。私は2030年の11月に、押し入れの上段のことを思い出せるんだろうか。スマホの機種変を2回はさんで、子どもが4歳になっていて、たぶん引っ越しもしている。無理だな、と思いました。

そこから調べて行き着いたのがローリングストックです。ただ、やり方を紹介している記事はどれも「普段から食べて買い足す」で終わっていて、肝心の続け方が書いていない。この記事は、実際に半年やってみて、何が続かなくて何が続いたかの記録です。

5年後の自分を、まったく信用できなかった

長期保存食の弱点は、期限が長いことそのものにあります。5年後は遠すぎて、行動につながらない。私は歯医者の3ヶ月後の予約すら忘れる人間なので、5年は完全に射程外でした。

もちろん買ったこと自体は無駄じゃないです。アルファ米は水を注ぐだけで戻るし、軽い。ただあれは「動かさない備蓄」で、置いた瞬間に管理の問題が発生する。買った時点では備蓄が完成した気になるけど、実際には5年間の管理タスクを自分に課しただけなんですよね。

ローリングストックは、そこを逆から解く方法です。期限を覚える必要がない状態を作る。忘れても勝手に消費されて、勝手に補充される。エンジニアの言い方をすると、記憶ではなく仕組みで担保する。これが腹に落ちてから、ようやく手が動きました。

特別なものを買わない。それが本質だと思う

最初にやった間違いを書いておきます。私は「ローリングストック用の食品」を探しに行きました。防災コーナーに並んでいる、ちょっと期限の長い缶詰やパン。それを買って、日常の棚とは別の場所に置いた。

2ヶ月後、ひとつも減っていませんでした。当たり前です。普段食べないものを、普段食べる場所以外に置いたら、そのまま残る。私は結局、期限の短い長期保存食を作っただけでした。

ローリングストックのやり方として大事なのは、備蓄用の何かを買うことではなくて、いつも食べているものを少し多めに買って、古いほうから使う。それだけです。うちの場合、レトルトカレー、パスタと市販のソース、サバの水煮缶、インスタント味噌汁、無洗米。全部もともと食べていたものを、必要量の2倍前後まで積み増しただけ。新しく買い足した「防災食品」はゼロでした。

この考え方に切り替えてから、消費のペースが一気に上がりました。理由は単純で、防災のために食べているという意識がないからです。夜に何もない日、カレーを食べる。それが結果として備蓄の入れ替えになっている。

意志で回そうとした結果、スプレッドシートは3週間で止まった

ここが一番の失敗談です。仕組み化と聞いて、私が最初にやったのはスプレッドシートでした。品名、購入日、賞味期限、個数の4列。期限が近いものに色が付く条件付き書式まで入れて、なかなかいい出来だったと思います。

3週間でメンテナンスが止まりました。原因ははっきりしていて、更新のコストが高すぎたんですよね。カレーを1つ食べるたびに、スマホを出して、シートを開いて、数字を1減らす。子どもが泣いていれば当然そっちが優先で、後でやろうと思ったことは後でやらない。

入力の手間より、備蓄の管理から得られる安心のほうが小さかった。だから続かなかった。ここは意志の弱さではなく設計ミスだと考えて、記録をやめる方向に舵を切りました。今の我が家に、備蓄の管理表はありません。

収納は、左から古い順に並べるだけ

代わりにやっているのが、置き方のルールです。パントリーの棚の1段を備蓄用にして、左が古い、右が新しいと決めた。買ってきたものは必ず右端に入れる。食べるときは必ず左端から取る。それだけです。

これだと期限を確認する作業がまるごと消えます。左にあるものが一番古いことは、並べ方が保証してくれる。スーパーの棚の前出しと同じ発想で、仕組みが情報を持ってくれているので、人間は覚えなくていい。妻にも「左から取って、右に足す」とだけ伝えて共有できました。ルールが1行で説明できるかどうかは、けっこう大事な基準だと思っています。

ただし完璧ではないです。急いでいるときに右から取ってしまうことは普通にある。そのため月に1回だけ、棚の左端3つの期限を目視します。15秒ほどで終わるし、記録はしません。

買い物リストとカレンダーに寄生させる

補充のほうは、新しい習慣を作らないのがコツでした。うちは買い物リストを共有アプリで管理しているので、備蓄品を消費したらその場でリストに1行足す。備蓄専用の何かではなく、明日の牛乳と同じ列に並べる。これで「補充を忘れる」が「牛乳を買い忘れる」と同じ確率まで下がりました。

もうひとつがカレンダーの繰り返し予定です。毎月1日に「棚の左端チェック」を入れてあります。通知が来たら15秒だけ見る。この2つと収納ルールだけで半年回っています。仕組みは3つが限界で、4つ目を足すと全部が崩れる感覚がありました。

全部を回そうとすると、たぶん破綻する

途中でやめたことがもうひとつあります。備蓄品を全部ローリングストックにしようとしたことです。

回せるものと回せないものがあるんですよね。普段食べるレトルトや缶詰は回る。でも先ほどのアルファ米は、日常でわざわざ食べたいものではない。無理に食卓に出すと家族の不満が出るし、そもそも回転させる意味が薄い。5年の期限があるものを、無理に半年で入れ替える理由はどこにもないです。

だから2階建てにしました。1階が日常の延長のローリングストック、ここが3日〜4日分。2階が動かさない長期保存食で、こちらが残りの数日分。全体で1週間分を目指すという構成です。一般的にも食料の備蓄は最低3日、推奨1週間分とされているので、日常で回せる範囲を最低ラインに充てて、足りない分を長期保存食で埋めるのが現実的だと思っています。

2階のほうは年に1回、防災の日あたりにまとめて確認するだけ。管理対象を減らしたことで、ようやく続く仕組みになりました。

停電を前提にすると、温めずに食べられるかが効いてくる

ローリングストックの中身を選ぶとき、途中から基準がひとつ増えました。加熱せずに食べられるかどうかです。

備蓄を考え始めたころ、私は湯せんのことを何も考えていませんでした。レトルトなら鍋で3分、くらいの感覚。でも停電と断水が同時に来ると、その3分の難易度がかなり上がります。IHコンロは電気が止まれば動かない。カセットコンロがあっても、ボンベは有限です。しかも湯せんに使った水は飲めなくなる。1回のカレーのために1リットル近い水を捨てる計算になって、これは厳しいなと。

それで買ったのが、江崎グリコの常備用カレー職人です。常温のまま食べられるように作られたレトルトカレーで、170gのパウチ。楽天で3食パック×10個の30食入りが4,158円だったので、1食あたり139円くらい。中辛と甘口があって、うちは家族で食べる前提だったので甘口を選びました。賞味期限は製造から3年程度あるので、日常のカレーとして月に何度か消費しつつ、常に20食前後をキープする回し方をしています。

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実際に温めずに食べてみました。感想としては、ちゃんと食べられる、が正直なところです。おいしい寄りではあるけど、温めたレトルトカレーと同じ体験ではない。常温だと油脂が舌の上でわずかに重く感じます。香りの立ち方も弱い。あと甘口を30食まとめて買ったのは判断ミスでした。大人だけで食べる日が続くと物足りなくて、次は甘口と中辛を混ぜます。1箱30食は3人家族には多く、パントリーの1段のうち半分を占領しています。

それでも常備する価値はあります。比べる相手は温かいカレーではなく、停電の夜に何も食べられない状況のほうなので。

水とカセットボンベ、そしてこれから始まる離乳食

食べ物以外もこの仕組みに乗せられます。まず水。1人1日3リットル×最低3日、推奨は1週間分とされています。大人2人だと1週間で42リットル、2リットル6本入りのケースで4箱弱。これを全部長期保存水で揃えると場所も費用もかさむので、うちは普段飲むミネラルウォーターを常時3ケース置いて、左から使う同じルールで回しています。

カセットボンベも同様です。鍋をする冬に消費して、春に補充する。ボンベは1本で強火なら1時間程度が目安とされるので、うちは常時6本を切らさないようにしています。ちなみにボンベにも使用期限の目安があって、製造から7年程度が推奨とされています。ここも古いものから鍋に使えば自然に入れ替わる。

そして最近、品目がひとつ増えました。子どもが生後6ヶ月に入って離乳食が始まったので、市販のベビーフードのパウチが棚に加わっています。これが今のところ一番むずかしい。賞味期限が1年から1年半と短めなうえに、食べられる月齢が5ヶ月、7ヶ月、9ヶ月と細かく分かれていて、多めに買うと成長のほうが先に進んでしまう。半年後には食べられなくなるものを積むことになります。

なので子ども向けだけは、多めに買うのを2週間分くらいにとどめて、月齢が上がるタイミングで中身を入れ替える運用にしています。ここは仕組みで自動化しきれていない部分で、しばらく試行錯誤が続きそうです。

うまく回っている合図は、意識しなくなったこと

半年やってみて、成功の判定基準がわかってきました。備蓄のことを考えずにカレーを食べた日があるかどうか、です。

最初の1ヶ月は、1食ごとに「これは備蓄の消費だ」と意識していました。今はもう、棚の左から取って、リストに書いて、それで終わり。何も考えていません。月に一度カレンダーの通知が来て15秒だけ棚を見る、あとは日常が勝手に回してくれる。この状態になってはじめて、続いていると言えるんだと思います。

逆に言うと、気合いが必要な段階ではまだ仕組みができていない。スプレッドシートで挫折したときの私は、気合いだけで走っていました。

押し入れのアルファ米は、今もそこにあります。ただ今は、あれを忘れても大丈夫な状態になった。それが半年でいちばん変わったところです。

この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

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