ポータブル電源 防災用 容量の選び方|停電3日を想定して計算した

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ポータブル電源は容量が大きいほど安心。最初はそう思っていました。比較サイトを開けば容量順に並んでいて、上のほうを買えば間違いない気がしてくるんですよね。でも、うちの場合に何Wh必要なのかは、どのサイトも教えてくれない。仕事柄、数字が出ないと決められないタチなので、スマホ1回の充電が何Wh、電気毛布が1時間で何Wh、と全部書き出して積算してみました。結果、3人家族が3日しのぐのに必要なWhと、現実に買える容量には想像よりずっと大きな開きがありました。この記事はその計算の記録です。

20000mAhのモバイルバッテリーで足りると思っていた

去年の夏、住んでいるマンションが落雷で6時間ほど停電しました。手元にあったのは20000mAhのモバイルバッテリーが2個だけ。

スマホは困りませんでした。問題はそれ以外です。エアコンが止まって室温がじりじり上がる。何より、お湯が沸かせなかった。真っ暗な台所でカセットコンロと片手鍋を見張りながら「電気が足りないというのはこういうことか」と思いました。当時はまだ子どもが生まれる前です。

「何mAh」ではなく「何Wh」で考える

まず単位を揃えます。モバイルバッテリーはmAh、ポータブル電源はWh(ワットアワー)。mAhは電圧が分からないと比較できないので、Whに直したほうが話が早いんですよね。20000mAhはセル電圧3.7Vでおよそ74Wh。1536Whは単純計算でその20個分です。

使う側は、家電のラベルの消費電力(W)に使う時間(h)を掛ければWhが出ます。うちで想定した数字はこうなりました。いずれも一般的な目安です。

  • スマホ1回のフル充電:約20Wh
  • ノートPC1回のフル充電:約60Wh
  • LEDランタン(5W)を6時間:約30Wh
  • DC扇風機(20W)を8時間:約160Wh
  • 電気毛布(50W前後)を8時間:約400Wh
  • 電気ケトルで500mlのお湯を沸かす:約60Wh
  • Wi-Fiルーター+ONU(10W前後)を24時間:約240Wh
  • 6畳用エアコン(運転中500W前後)を3時間:約1,500Wh

並べてみると、スマホと照明は驚くほど安い。1日つけっぱなしでも大した消費じゃない。逆に熱と冷気を作る家電はケタが違います。エアコンの1,500Whは、1536Whのポータブル電源をたった3時間で空にする量。容量計算は実質「熱をどうするか」の計算だと思ったほうがいい。

3人×3日を積算したら、1536Whでも届かなかった

次に1日分を積み上げます。夫婦2人と生後5ヶ月の子ども、夏場の停電を想定。

  • スマホ2台×1回:40Wh
  • 照明(LEDランタン2つ):60Wh
  • お湯(ミルクと食事で5〜6回):約250Wh
  • DC扇風機を夜通し10時間:200Wh
  • ノートPCを1回充電:60Wh
  • Wi-Fiルーター+ONUを24時間:240Wh

合計850Wh。これが1日分です。3日なら2,550Wh。

ここで1536Whを見ると、すでに足りていません。しかも表示容量がそのまま取り出せるわけでもない。交流に変換する段階でロスが出るので、実際に使えるのは表示の85%前後とされています。1536Whなら1,300Wh程度で、1日850Whなら1日半でゼロです。

大容量に逃げる前に、削れるものを削りました。まずWi-Fi。停電すれば光回線のONUも止まるし、通信事業者側の設備が生きているかも分かりません。自宅のWi-Fiに240Wh払うより、スマホの回線に頼るほうが確実です。ノートPCも初日から仕事をする前提はやめて、合わせて300Wh減。残り550Wh、3日で1,650Wh。まだ届かない。扇風機を8時間に縮め、お湯の回数も見直して1日470Wh、3日で1,410Wh。ここまで削ってようやく「ほぼ3日」です。冬はさらに厳しく、電気毛布を1枚8時間使うだけで400Wh乗る。1日800Wh超、1日半しか持ちません。

つまり1500Wh級で「停電3日を完全に自立して過ごす」のは、かなり切り詰めてやっと、という水準でした。カタログの「〇日分の電力」は、たいてい照明とスマホだけを数えています。

では諦めるのかというと、そうではなくて。考え方を「3日分を蓄える器」から「2日を確実に守り、3日目は充電手段と併用する」に変えました。ソーラーパネルか、車からの充電か。それなら1536Whは現実的な線に見えてきます。

生後5ヶ月がいると、削れない項目が増える

上の計算で唯一ほとんど削れなかったのが、お湯の250Whです。

粉ミルクは一般的に70℃以上のお湯で調乳するよう案内されています。粉に混入している可能性のある菌を死滅させるためで、省略できる工程ではありません。うちは混合なので1日5回前後。1回200mlなら1000Wのケトルで2分弱、およそ30Wh。5回で150Wh。大人の食事用が2〜3回で100Wh前後。合わせて250Whです。

カセットコンロで代替はできます。うちもボンベを12本ストックしている。ただ、夜中の3時に泣き出した子どもの前で火をつけて片手鍋を見張るのと、ケトルのスイッチを押して2分待つのとでは負担がまるで違う。

もうひとつは温度です。大人はある程度我慢できますが、乳児は体温調節が未熟で、汗をかいても自分で服を脱げません。夏の停電で室温が上がっていくとき、最初に電気を回すのはスマホでも冷蔵庫でもなく扇風機だと決めました。冬なら電気毛布。大人だけの家なら「あれば便利」だった項目が、赤ちゃんがいると「最初に確保する項目」に繰り上がる。これが計算式のいちばん大きな違いでした。

エアコンは出力の面では動かせますが、3時間で使い切ってしまう。扇風機と保冷剤で凌いで3日引き延ばすほうを選びました。

定格2000Wでも、電子レンジは回さないと決めた

容量(Wh)より先に確認すべきなのが出力(W)です。最初に買ったのは300Wh級・定格出力300Wの小型モデル。1万円台、重さ4.7kg。届いてすぐ電気ケトルを挿したら、ピッと鳴って保護回路が働き、何も起きませんでした。ケトルは1000W。定格300Wではそもそも起動しない。容量が足りないのではなく出力が足りない。この2つを混同していました。

さらにややこしいのが、定格出力と瞬間最大出力(サージ電力)の違いです。モーターやコンプレッサーを積んだ家電は、動き出す瞬間だけ定常時の2〜3倍を要求します。冷蔵庫の消費電力が100Wと書いてあっても、起動の一瞬は数百Wに跳ねる。定格だけ見て足りているつもりでも起動できないことがある。今回のモデルは定格2000W/瞬間最大4000Wなので、ここは余裕があります。

ただ、動かせることと、非常時に使っていいことは別です。電子レンジは消費電力1400W前後で、5分回せば約117Wh。ドライヤーを1200Wで10分使えば200Wh。1日470Whで回す計画に、ドライヤー1回で200Whを乗せる余裕はありません。定格2000Wは「平時のキャンプや在宅ワークで便利」という意味で受け取っています。ちなみに最初の300Wの小型機は返品せずに残しました。理由は次の通りです。

容量を上げるほど、持ち出せなくなる

「3日には少し足りない」と分かったので、当然もっと大容量も見ました。2000Wh級、3000Wh級。数字だけなら解決します。止まったのは重量欄でした。3000Wh級は多くが30kg前後、2000Wh級でも20kg超が珍しくありません。米袋を抱えてマンションの階段を降りる姿を想像してみてください。しかも片手には子どもか荷物。無理でした。

今回の1536Whのモデルも、スペック上は17kg前後(仕様は改定されることがあるので、購入前に最新の数値を確認してください)。持ち上がるには持ち上がるけど、階段4階分は現実的じゃない。車に積むならともかく、徒歩避難の荷物にはなりません。

ここで、ポータブル電源を「一つ選ぶ」という発想をやめました。在宅避難で据え置く分と、持ち出す分は、そもそも別の道具です。電気だけ止まっているなら大きいほうが役に立つ。家を離れるなら300〜500Wh級・5kg前後をリュックに括りつけるほうが確実です。失敗して余った300Wの小型機が、そのまま持ち出し用に収まりました。結果オーライですが、最初から二段構えで考えるべきでした。

それでも15万円を出した理由

条件を絞り込んで残ったのが、Jackery ポータブル電源 1500 Newでした。容量1536Wh、定格出力2000W、瞬間最大4000W、価格は15万円弱です。

正直、最後まで迷いました。ベビー用品に毎月お金が出ていく時期に15万円は重い。しかも置物のまま終わる可能性がある買い物です。半額の700Wh級で妥協しようかと、カートに入れては消してを繰り返しました。

それでも決めた理由は3つ。ひとつは、700Wh級だと上の計算で1日ももたないと分かってしまったこと。数字を出した後では見なかったことにできません。ふたつめは電池の種類。リン酸鉄リチウムイオン電池で、公称おおよそ10年・4000サイクル前後の寿命とされています。防災用品でいちばん怖いのは「いざ使うときに劣化していた」なので、寿命の長さは価格に反映していいと考えました。

みっつめは、平時に使い道があること。在宅勤務なので、UPS機能(停電を検知して瞬時に給電へ切り替える機能)をデスクの裏で使っています。作業中に電気が飛んでもPCが落ちない。年に数回しか出番のない防災用品ではなく、毎日通電するものにできたのは大きかったです。

Jackery ポータブル電源 1500 New 1536Wh リン酸鉄 十年長寿命 定格2000W バッテリー コンパクト 防災 家庭用

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不満もあります。まず17kg前後という重さ。これ単体を防災リュックの延長で考えると確実に失敗します。サイズもそれなりで、2LDKの賃貸だと置き場所を1つ潰す。高出力で使うとファンもけっこう回ります。深夜に大きい負荷をかけると寝室まで音が届く。アプリ遠隔操作も、同じ部屋にある機械に使う場面はほとんどありません。

それと、1.5時間でフル充電というスピードは「コンセントが生きている平時」の話です。停電後には使えないので、日頃から残量を高めに保つ必要がある。うちは月初に確認する運用にしています。

最後に

容量選びで大事だったのは「何Whあれば安心か」ではなく、「停電中に何を諦めないか」を先に決めることでした。エアコンを諦めてミルクのお湯を取る。優先順位が決まれば必要なWhは自然に出てきます。逆に順位をつけないまま容量だけ追うと、重すぎて動かせない機械にたどり着く。

1536Whは、うちの計算では2日を確実に守れて、切り詰めれば3日目に手が届く量でした。3日を完全に賄える万能の箱ではありません。停電の想定期間は数日から1週間以上と幅があるとされているので、水や食料と同じで、電気も「これで全部足りる」とは考えないほうがいい。まずは自宅の家電のラベルを見て、消費電力を3つ4つ書き出すところから。掛け算するだけで、必要な容量の輪郭はかなりはっきりします。

この記事は防災グッズの個別レビューです。3人家族で実際に揃えたもの全体と買う優先順位は防災グッズ 本当に必要なものリスト|3人家族で実際に揃えた全部にまとめています。

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